井川蒸溜所 見学レポート|行き方・ハンドフィル
2026.6.12

日本でいちばんの僻地にあるであろう蒸溜所。
静岡駅から井川蒸溜所まで、車で、なんと片道4時間。
前回は、「なぜ、この山の上でウイスキーを造るのか」を書きました。
今回は、私が実際に辿った道のりと、見学で見たものづくり、そしてハンドフィルの体験を、写真とともにお届けします。
道のり ── 4時間、山が教えてくれる

蒸溜所までの道は、気が遠くなるくらいに遠いです。
森の中には道を作ったり、崖が崩れたところを修復する工事が入っており、通行止めになる時間が日毎に変わるため、時間が読めないというのが現状です。

何個も通り過ぎたダム。
暮らしの水を支える一方で、土砂で少しずつ埋まっていく。再生はできない施設なのだと、ここで教わりました。

「赤崩れ」。
落差およそ1,000メートルの、巨大な崩落。
ディズニーランドがまるごと入ってしまうほどで、しかも見えているのは、ほんの一部だそうです。

途中の吊り橋。足元を、澄んだ水が流れていきます。
↓怖すぎて途中までしか進んでいませんが、ぜひ動画で!!
湧き出したばかりの仕込み水。
木賊湧水と呼ばれる、南アルプスの森が濾した水です。
思わず一口。冷たくて、雑味がまるでない。これが、そのままウイスキーになります。
道の途中には、社長が手がける行者ニンニクの畑も。
山の景色は、どこを切り取っても絵になります。
道中では、猿や鹿に出会い、鳥たちの囀りが、ずっと聞こえていました。




ところどころで、絶滅危惧種を観察し、記録している人たちの姿も見かけました。
平井さんによると、リニアの問題などによって、この環境にどんな変化が起きるのかを、記録し続けているのだそうです。
守られ、見守られている自然が、たしかにここにある。そう実感する光景でした。
そして、こうした公共の事業が続くことで、この山の道も、暮らしも、持続可能なカタチで整えられていくのだそうです。
入る前に ── タイヤと、靴を洗う
何時間も車を走らせたあと、車のタイヤを洗う場所があります。
外から、外来種の植物の種などを持ち込まないため。
この山の生態系を、できるだけそのまま守るための、ひと手間です。
(車の中からだったので、上手に写真を取れませんでした)
靴の底をはらうところもありました。

前回書いた「触らない森」の思想が、こんなところにも息づいていました。
ここを訪ねるということは、この環境の一部に、お邪魔させてもらうということなのだと、背筋が伸びました。
製造 ── 機械が支え、最後は人が決める
蒸溜所に着いて、いよいよ見学へ。
ここのものづくりは、機械と、人の感覚の、両方でできていました。




見学中、突然、館内に放送が流れて、びっくりしました。
ポットスチルにはセンサーが取り付けられていて、温度や水位が設定した値になると、自動でアナウンスが流れる仕組みなのだそうです。
人がつきっきりで張りつかなくても、「今ですよ」と機械が知らせてくれる。
ただし、ここが一番大事なところ。
蒸留したスピリッツの、どこを「いちばん美味しい部分」として樽に詰めるか。
そのカットだけは、機械任せにしません。
毎日、造り手が自分の舌と鼻で確かめて、決めているそうです。

各工程に担当者がいて、それぞれが誇りを持っている。
前回の山の話と、まっすぐつながりました


熟成に使う樽。バーボンやシェリーに加えて、自社の森のミズナラ樽も。
最初のミズナラ樽は、倒れて出てきた木から造られたといいます。
標高1,200メートル、霧のたちやすい森のなかで、原酒はゆっくり熟成されていきます。
ここで働く製造メンバーは、毎日この山を下りることができないので、基本的には近くに住み込み。
文字どおり、この山で暮らしながら、ウイスキーを造っています。

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この山に関わる人たちや登山者も使うようで、食事もついていて、快適なのだとか。


蒸溜所の近くには、運営する十山株式会社の本社もあります。
その2階は、南アルプスを撮り続けた山岳写真家・白籏史朗さんの写真館。
いつか、ここをバーとして開きたいのだそうです。
バーをやる者として、その日が来るのが、今から楽しみでなりません。
ハンドフィル

詰めさせてもらったのは、この蒸溜所が動きはじめた、ごく初期に蒸溜されたノンピートのバーボンバレル。
テイスティング

最後に、テイスティングもさせていただきました。
井川蒸溜所がいま世に送り出しているのは、4種類。それに使われた原酒です。
完成された一杯を味わう、というよりも、これから何十年もかけて育っていく、その出発点を確かめる時間でした。


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最新シリーズ「井川蒸溜所 シングルモルト デッサンシリーズ ファウナ 2026 」にデザインされているのは、クマタカ。
箱に採用されている風景をちょうど撮影することができました。
この環境で、どんなふうに育つのだろう
私がいちばん知りたいと思ったのは、ここから先のことでした。
標高1,200メートルの、霧の中。
気圧が低く、冷たく湿った空気。
この熟成環境は、ほかの日本の蒸溜所とは、まるで違います。
日本の多くの蒸溜所は、比較的あたたかい土地にあり、気温が高いほど、熟成は速く進みます。
けれどここは、夏でもひんやりとして、冬は氷点下まで下がる、
冷涼な高地。
だからおそらく、熟成はゆっくりと進み、基本は、じっくり時間をかけた長期熟成になっていくのだろうと思います。
実際、井川蒸溜所自身も、長く寝かせることを見据えているそうです。
この、他にない環境が、これから何年も、何十年もかけて、どう変化していくのでしょうか?
盤石な経営基盤をもつ井川蒸溜所。
これからこの山の時間を、たっぷりと吸い込んでいく。
そう思うと、先のリリースに今から楽しみでなりません。
井川をもっと ── 道すがら、周辺の見どころ
ここまで来るのは大変ですが、周辺には、足を延ばす価値のある場所が点在しています。
写真とともに、少しだけ。


南アルプス赤石温泉 白樺荘。
『ゆるキャン△ SEASON3』のモデル地。
劇中の施設名「畑薙荘」の看板に、期間限定で掛け替えられています。

大井川鐵道 井川線。
ダム建設のために生まれた、日本唯一のアプト式列車。90パーミルという、日本一の急勾配を登ります。
訪ねる前に ── 行き方と、持ち物のこと
最後に、これから関心を持たれた方へ、いくつか書き添えておきます。
まず大前提として、井川蒸溜所は、公式に見学ツアーを行っているわけではありません。
ここに書いたことは、あくまで私が体験させていただいたこと。
訪れた方全員に、同じことが同じように起こるとは限らない点を、どうかご了承ください。
そのうえで、行き方のこと。
訪ねられるのは、4月から11月ごろまで。
バー関係者でも、月に4回ほどしか足を運べません。
天候によっては、途中で引き返すことになる日も、少なくないそうです。
しかも、途中からは私有地。
自家用車では入れませんので、もし訪ねられるときは、くれぐれもお気をつけて。
持って行くと安心だったもの(私の場合)。
- 防寒着。標高が高く、夏でも結構寒いです
- 汚れてもよい、歩きやすい靴。
- 車酔い対策。長い山道が続きます。片道4時間です。
- 飲み物や軽食。周辺にお店はほとんどありません。
- 湿気が高いので、髪の毛が爆発します。クセっ毛の女性の方は、ゴムがあった方がよいと思います。
(落石のある区間用のヘルメットは、蒸溜所が用意してくださいました)

気軽には行けない、日本でいちばんの僻地にあるであろう蒸溜所。
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
「ウイスキーもラム酒も、造り手の想いに触れた時、もっと美味しくなる。」
📍 Bar Little Happiness
広島市中区流川町5-14-1F
月〜土:19:00〜24:30 / 日:〜24:00
(最終入店・約1時間前)
定休日:ほぼ年中無休
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!