お問い合わせはこちら

ラオス・LAODI蒸留所訪問記②|一週間で勝ち取った「奇跡の免許」

2026.1.29
ラオス・LAODI蒸留所での再会

LAODIは日本の資本を離れ、名実ともに「ラオスの会社」として新たなスタートを切りました。

この決断と、ある「伝説のパートナー」との出会いが、LAODIの運命を劇的に変えることになります。


運命のパートナー、シハタ・ラソン氏


新生LAODIの再生を支えた鍵は、現在のCEOであるシハタ氏です。


彼は井上さんにとって、単なるビジネスパートナー以上の存在となりました。


シハタ氏の家系は、ラオスにおいて極めて高名な一族です。

彼のお父様が亡くなられた際には、元大統領と同格の「国葬」が執り行われるほどの地位にありました。


シハタ氏自身も日本へ8年間留学しており、日本の文化や考え方を深く理解していました。


社会主義国であるラオスにおいて、外国人が事業を行うのは容易ではありません。


税金や輸入手続き、煩雑な規制など、常にトラブルがつきまといます。


しかし、シハタ氏が代表に就いたことで、状況は一変しました。


一党独裁の複雑な権力構造の中でも、シハタ氏の存在が盾となり、経営は劇的にスムーズになったのです。


六人の大臣を前にした「命がけのプレゼン」


再出発にあたり、井上さんがこだわったのが、正式な「酒造免許」の取得でした。


タイやベトナム、カンボジアといった近隣諸国でも、外国人がラムを造っている事例はありますが、その多くは規制が厳しく、熟成酒(ダークラムなど)の製造が禁止されていたり、非常に限定的な許可しか得られていません。


「外国人が自国で酒を造る」ということに対し、どの国も非常に保守的です。


日本でさえ、新規でウイスキーやビールの製造免許を取るのは至難の業です。


しかし井上さんは、ラオスの6人の大臣を前に、自らプレゼンテーションを行いました。


その席で井上さんは、あえて挑発的とも取れる言葉を投げかけます。


「この国には、土地以外に何もないじゃないですか」


そして続けました。


「土地があるなら、農産物の加工品を造りましょう。その加工品の中で、最も価値が高いものは何か。それはお酒です」


「お酒は農産物からできている」という発見


当時の大臣たちは、エリート層ではありましたが、お酒がどのように造られるかという根本的な知識を持っていませんでした。


「ウイスキーは最初からウイスキーとして存在する」と思い込んでいた彼らに、井上さんは丁寧に説明しました。


「ウォッカはジャガイモや麦、ブランデーはブドウからできています。そしてこの国に最適な農産物は、サトウキビです。そのサトウキビから世界に通じるお酒を造りましょう」


この「お酒は農産物の価値を高めたものである」という井上さんの熱いプレゼンは、大臣たちの心を動かしました。


通常、ラオスでこうした許可を得るには、半年以上かかるのが当たり前なんだそうです。


しかし、この時はなんとわずか1週間で正式な許可が下りたのです。


「落とし前」をつけるための再起


なぜ、井上さんはそこまでしてラオスに残る決意をしたのか。


それは、自ら原生林を切り拓き、重機を回して作り上げたこの場所への愛着、そして何より「このままでは落とし前がつかない」という強い想いからでした。


日本へ帰れば、奥様が待っています。


再起を決めた時、奥様からは「もう無理だ」と離婚を考えられるほど呆れられたと、井上さんは笑っていました。


それでも井上さんは、自分の信じた道を突き進みました。


「井上さん、もう一回やろうよ」 その言葉から始まった二人三脚の挑戦。


ラオスの豊かな大地と、日本人の職人魂、そして現地の有力なパートナーシップ。


この三つが揃った時、LAODIは単なる「日本人が造る酒」を超え、「ラオスが世界に誇る産業」へと一歩を踏み出したのです。

(次回、オバマ大統領の訪問がLAODIに運んだ、奇跡の追い風についてお伝えします)


出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。

【谷本からの補足】 このラオディ蒸溜所に関する記事は、実際に現地を訪問した体験を基に執筆していますが、一部谷本の個人的な考察や解釈が含まれています。 一人のラムLOVERの独り言としてお楽しみいただければ幸いです。


この話のテーマから、ほかのコラムを読む

ウイスキーラム蒸溜所レポート

【この記事を書いた人】

谷本 美香(Mika Tanimoto)
株式会社Little.m 代表取締役/オーナーバーテンダー

広島・流川で2006年からウイスキーとラムの専門店「Bar Little Happiness」を営む。国内外の蒸溜所を訪ね、造り手の話をコラム「ウイスキーとラムの手帖」に綴っている。広島市優良技能者。

「ウイスキーもラムも、造り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」

【お店の情報】📍 Bar Little Happiness

広島市中区流川町5-14 Rolling流川 1F
月〜土 19:00〜24:30/日 19:00〜24:00(店主が蒸溜所へ旅に出る日はお休み)
ノーチャージ・予約不要

Instagram|公式LINE|Googleマップ

🛒 遠方の方はオンラインショップからもお求めいただけます。