【全ては必然】9年前の記事が繋いだ、一夜
2026.3.31
Thanks 20th Anniversary 20の記憶Vol4 Vol1はこちら Vol2はこちら Vol.3はこちら
「覚えていますか?」
扉を開けて入ってきたその方の顔を見た瞬間、私の時計の針は9年前へと一気に引き戻されました。
広島を離れて四国へ行くはずだった今月の初め。
お店も休業する予定だった日。
ところが、直前になって先方の都合で予定がキャンセルに。
「それなら」と急遽、お店を開けることに決めた……そんな不思議な空白から始まった一日でした。
もし、予定通り四国へ行っていたら。
もし、お店を閉めていたら。
この再会は、決して起こり得ませんでした。
9年前、一人の「お客様」として
その方との出会いは、約9年前のこと。
最初は、たまたま通りすがりで入ってくださったお客様でした。
私のウイスキーや仕事の想いに深く耳を傾けてくださり、連日ご来店。
楽しく言葉を交わした数日後。
「実は……」と明かされたのは、記者という身分でした。
「ぜひ、あなたのことを記事に書かせてほしい」
そうして形になったあの記事は、「リトハピ」にとってかけがえのない宝物です。
しかし、当時の私の心境は少し複雑でした。
あの頃の私は、職人やバーテンダーとしてではなく、何よりもまず「一人の経営者」として正当に評価されたい、認められたいと肩肘を張っていたからです。
当時の私にとって、その記事は「自分が望んでいた文脈」とは少し違っていたのかもしれません。
けれど、私の意地やこだわりを飛び越えて、記者の眼差しはもっと本質的な「何か」を写し取っていました。
ウイスキーへの純粋な想い。
今なお、その記事をきっかけに私を訪ねてくださるお客様が絶えないほど、大きな力を持ち続けています。
家族の心の扉を開いた、第三者の言葉
何より、この記事が私にくれた最大のギフトは「親との絆」でした。
それまで、どこか「水商売なんて……」と、私の仕事に対して複雑な思いを抱えていた両親。
けれど、第三者である記者の目を通して綴られた私の想いを読んだとき、両親は初めて、私を一人のプロフェッショナルとして認め、興味を持ってくれたように感じました。
あの記事がなければ、今の親子関係も、迷いなく20年走り続けられた今の自分も、存在していなかったかもしれません。
20年目の節目に届いた、バルヴェニーの香り
約9年ぶりに再会した記者の方が注文されたのは、バルヴェニーでした。
それは、かつて私がウイスキーの世界に魅せられるきっかけとなった、大切な銘柄。
「今もお店のパンフレットに、あの時の記事を載せさせていただいているんです」
そう伝えると、一緒に来られた先輩や同僚の方々から「良い仕事をしたな!」と温かな声が上がりました。
言葉ひとつで、誰かの人生を艶やかに彩ることができる。
記者というお仕事の尊さを、改めて目の当たりにした瞬間でした。

全ては必然
予定の変更も、9年前の取材も、そしてこのタイミングの再会も。
20周年という大きな節目を前に、神様が「そのままのあなたで、自分を信じて進みなさい」と背中を押してくれたような気がしてなりません。
あの日、私のウイスキーへの想いを真っ直ぐに拾い上げ、光を当ててくれたあなたへ。
9年という歳月を飛び越えて、またこのカウンターでの再会の必然に、心からの感謝を込めて。
Thanks 20th Anniversary 20の記憶 Vol4
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto)
株式会社Little.m 代表取締役/オーナーバーテンダー
広島・流川で2006年からウイスキーとラムの専門店「Bar Little Happiness」を営む。国内外の蒸溜所を訪ね、造り手の話をコラム「ウイスキーとラムの手帖」に綴っている。広島市優良技能者。
「ウイスキーもラムも、造り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
【お店の情報】📍 Bar Little Happiness
広島市中区流川町5-14 Rolling流川 1F
月〜土 19:00〜24:30/日 19:00〜24:00(店主が蒸溜所へ旅に出る日はお休み)
ノーチャージ・予約不要
🛒 遠方の方はオンラインショップからもお求めいただけます。