嘉之助蒸溜所・石原氏が繋ぐ「ご縁」とウイスキーの産業構造
2026.3.25
小諸蒸留所フェス2026に参加した最大の目的は、嘉之助蒸溜所の石原さんのお話を聴くことでした。
3蒸溜所のクロストークと嘉之助単独のセミナーに参加し、気づけば小諸の地で嘉之助について詳しくなってしまいました。
セミナーを通じて非常に納得がいった「産業構造」の視点と、嘉之助の唯一無二の特徴、そしてブランド・アドボカシー石原さんという人物を繋ぐ「ご縁」についてまとめます。
嘉之助蒸溜所:焼酎の伝統と革新が生む「メロー」な誘惑
嘉之助蒸溜所のバックボーンと哲学
嘉之助蒸溜所は、鹿児島県日置市に位置し、140年以上の歴史を持つ小正醸造を母体としています。
その原点は、2代目・小正嘉之助氏が抱いた「焼酎を世界に広めたい」という夢にあります。
その想いを受け継いだ現社長の小正芳嗣氏が、「焼酎造りで培った技術でウイスキーを造り、それを入り口に焼酎や鹿児島の魅力を世界へ発信する」ことを目的に設立しました。

(HPから拝借↑)
「分業」のスコットランド vs 「自前」の日本
今回のフェスで、嘉之助のブランド・アドボカシーを務める石原さんのお話を聴き、最も腑に落ちたのが「ウイスキー造りを産業構造で捉える」という独自の視点でした。
石原さんは、前職である物流企業の財務・海外での自動車部品管理の経験から、ウイスキー造りを「車の組み立て」に例えて説明しています。
- スコットランド(分業制):
車の工場がハンドル、タイヤ、エンジンをそれぞれ別の専門工場から集めて一台の車を作るように、多くの蒸留所間で原酒を交換・売買し、複雑な味わいを作り上げます。
そのため、一つの蒸留所は「特定の役割(部品)」に徹することが可能です。
- 日本(一社完結型):
日本では他社との原酒交換が一般的ではありません。
サントリーがニッカに原酒を分けてもらうことが難しいように、「一社のなかで、ハンドルもエンジンもタイヤもすべて自前で揃えて、レクサスを作り上げなければならない」という状況にあります。
この構造上の違いから、日本の蒸留所には「一つの場所で多様なタイプの原酒を生み出す能力(作り分け)」が不可欠になります。

嘉之助を形作る、こだわりの「作り分け」
嘉之助のウイスキーが持つ厚みと複雑さは、自前で多様な「部品」を生み出すための徹底した設備から生まれます。
- 3器の蒸留器:
ネックの形状やラインアームの角度が異なる3器を使い分け、力強いタイプから華やかなタイプまで多彩な原酒を造り分けています。
- 伝統のワームタブ:
焼酎造りに近い伝統的な冷却装置「ワームタブ」を使用。
接触面積が小さいため、ねっとりと舌に残る筋肉質な力強い酒質が生まれます。
- 温度管理の妙:
焼酎造りで培った「温度を操る」ノウハウを活かし、発酵槽には特製のウォータージャケットを装備。
発酵の途中であえて温度を上げ、乳酸菌を活性化させることで、嘉之助らしいリッチでクリーミーな、あの「メロー」な酒質を引き出しています。
- 熟成環境の多様性:
潮風の当たる「テロワール」、半地下でまろやかに熟成させる「レガシー」、小学校の体育館を活用した「コミュニティ」など、環境を変えることで異なるキャラクターを育てています。
「焼酎のプライド」を詰め込んだ樽熟成
嘉之助のアイデンティティは、自社の樽熟成米焼酎「メローコヅル」に使用した「リチャーカスク」にあります。
この樽で熟成させることで、アメリカンオークの甘みの後に、「麹(こうじ)」を思わせる独特のスパイシーな余韻が残る、これこそが嘉之助らしい「和のニュアンス」の正体。

なぜ社長は石原さんに声をかけたのか――「ご縁」が結ぶ経営理念
ブランドの顔である石原さんは、非常にユニークな経歴の持ち主です。
物流・財務のエキスパートであり、イギリスで過ごした幼少期にお父様から受け継いだ深いウイスキー愛があります。
入社の決め手は「英語・財務・ウイスキー」の三位一体
嘉之助蒸溜所が英ディアジオ社との提携を決めた際、求められたのは「世界と対等に渡り合える英語力」、「複雑な財務・製造計画を管理できる能力」、そして何より「深いウイスキー愛」でした。
この三つを兼ね備えた人物として白羽の矢が立ったのが石原さんです。
「400」という数字が結んだ、製造と財務の架け橋
石原さんが明かしてくれたエピソードは、強みを象徴しています。
社長も同席しないオンライン面談で課されたのは、「年次事業計画に基づき、月次のキャッシュフロー計画を作成せよ」という極めてシビアな課題でした。
石原さんは問いかけます。
「皆さんは『400』といったら何を思い浮かべますか?」。
これは、1トンの麦芽から取れるアルコールの生産量の目安。
財務の知識があっても、ウイスキー製造の実態を知らなければ正確な資金繰りは計算できません。
ウイスキーを「産業構造」として捉え、「麦芽1トンがいくらのキャッシュに変わるか」を論理的に語れる石原さんの存在が、入社の決め手となりました。

「他にはなかった」という謙虚さと、運命の合致
石原さんに「他にもオファーがあったのでは?」と尋ねると、「他にはなかったですよ」と謙虚に答えられました。
しかし、これほどの専門性と深い愛を持つ人材はそう簡単にいるはずがありません。
小正醸造の経営理念は、「喜びを共に作る」。
世界を相手にするシビアな交渉の場でも、根底にあるのは造り手への敬意と喜び。
この理念を体現する「最高の仲間」として、社長は石原さんを選んだのでしょう。
幼少期のお父様との思い出、2013年の東京でのイアン氏との出会い、そして趣味としてのウイスキー探求。
すべての点が嘉之助という場所で一本の線に繋がった。
石原さんのお話を聴きながら、これこそが「ご縁」なのだと感じました。
小諸の地で石原さんの想いに触れ、嘉之助がますます好きになりました。
お酒が運んでくれるのは、人と人との温かな出逢いであり、時を超えて繋がっていく「ご縁」そのもの。
この素晴らしいご縁が、皆様のバータイムにも彩りを添えられますように!
Bar Little Happiness では、嘉之助ウイスキーをご用意して皆様をお待ちしております。

Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!