三郎丸 龍虎 〜Mellow Meets Peated〜 三郎丸✕嘉之助
2026.6.19
「Mellow Meets Peated」
メローが、ピート(煙)と出会う。
正反対の二つが、ひとつのグラスの中で出会ったら、どんな味が生まれるのでしょう。
そんなワクワクを詰め込んだ一本が、『三郎丸 龍虎』。
富山の三郎丸蒸留所と、鹿児島の嘉之助蒸溜所による、初めてのコラボレーション。
三郎丸は、日本酒蔵をルーツに持つ造り手。
嘉之助は、焼酎蔵をルーツに持つ造り手。
どちらも2017年に、本格的なウイスキーづくりへ踏み出した同世代です。
力強くスモーキーな三郎丸。
潮風を思わせる、メローな嘉之助。
まるで正反対の二つが、互いの原酒を交換して、それぞれの一本を仕上げました。
三郎丸側のこの「龍虎」は、三郎丸らしいスモーキーさを軸に、嘉之助のメローな甘やかさが重なっています。
三郎丸は、ヘビリーピーテッドの原酒を、バーボン樽や焙煎樽で熟成。
嘉之助は、ノンピートの原酒を、バーボン樽で熟成。
その二つを、絶妙なバランスでバッティングした一本。
ブームではなく、文化にするために
三郎丸の稲垣貴彦社長は、こう願っています。
「この1本をきっかけに、お互いのファンが、相手の蒸留所のことも知っていってもらえたら」。
実は、日本のウイスキーづくりには、本場スコットランドと大きく違う点があります。
スコットランドでは、蒸留所同士が原酒を交換し合うのが、古くからの当たり前。
いろんな蒸留所の原酒を持ち寄って、一本の複雑な味を組み上げていきます。
でも日本では、その原酒交換が、これまであまり一般的ではありませんでした。
一つの蒸留所が、自前で何種類もの原酒を造り分けて、味の複雑さを生み出してきたのです。
だからこそ、今回の「原酒を交換する」という試みには、特別な意味があります。
この10年で、日本の蒸留所は100社を超えました。
その造り手たちが、垣根を越えて手を取り合い、連携を深めていく。
「その先にあるのは、スコッチのような、多層で、多様なウイスキーの世界」。
稲垣社長は、そう語っていました。
相まみえるからこそ、生まれる物語がある。
でも、それは相手を負かすための争いではない。
これは、三郎丸と嘉之助だけの話ではないのかもしれません。
ガイアフロー静岡蒸溜所の中村社長が、自身のコラムで、こんな場面を紹介しています。
2024年、日本で開かれたウイスキーの国際フォーラムでのこと。
「あなたの会社のライバルはどこか。どう競争に勝つのか」と問われたキリンのマスターブレンダー、田中城太さんが、こう言い切ったそうです。
「私の辞書に、競争という単語はありません!」
日本のウイスキー界は、長い不況の時代を、各社が肩を寄せ合って乗り越えてきました。
だから「競争で相手に勝つ」という発想そのものに、強い違和感がある。
その場にいた他の造り手たちも、深く頷いていたといいます。
競い合って終わるのではなく、ぶつかった先で、共に創る。
龍と虎、相まみえて、新しい物語が始まる
三郎丸の公式サイトには、こうあります。
「龍と虎が相まみえるとき、新たな物語が生まれる」。
対峙する二つが出会うからこそ、ひとつでは生まれなかった何かが立ち上がる。
その精神が、ラベルの「龍虎」に、そのまま込められています。
三郎丸の公式動画で、絵を描いた浮世絵師、アマヤギ堂ジュンさんが、制作を振り返っていました。
「普通だったら、コラボボトルなので協調路線で、親しみやすさを」
でも、今回のコンセプトは違った。
切磋琢磨して、ぶつかり合って、一本を作る。
「初めて聞いたとき、それなんか凄いなって思ったんです」
試作の段階から、何度も描いて、擦り合わせを重ねたそうです。
ただ仲良く並ぶのでもなく、睨み合って終わるのでもない。
切磋琢磨して、互いを高め合う関係を、一枚にする。
その難しさと向き合いながら、完成させていったといいます。
古来より対となる屏風にそれぞれ描かれてきた龍と虎を、あえて一つの作品の中に共に表現。
対照的でありながら同じく力強い二つの存在が肩を並べ、新たな価値を共創する瞬間を象徴しているとのことです。
公式動画によると、龍と虎の配置は、1:1にこだわったとのこと。
どちらかが大きく、どちらかが控えるのではない。
対等な二頭が、同じ画面で響き合う。
せめぎ合いながら、互いを高め合う。
そんな想いが表現されていました。
ジャパニーズウイスキーを、一時のブームではなく、一国の文化にしたい。
以前、念願だった三郎丸蒸留所を訪ねました。
案内してくださったのは、マスターブレンダーであり経営者でもある、稲垣貴彦社長。
独学でCADを習得し、世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON」をはじめ、いくつもの特許まで取得してしまった方です。
ウイスキー界のエジソンと呼びたくなる発明家でありながら、ウイスキーの話を始めると、どこまでも少年のような目をする。

でも、私がいちばん心を鷲掴みにされたのは、発明の凄さそのものではありませんでした。
稲垣社長が見据えているのは、もっと遠く。
自社の枠を、はるかに超えたところに、その目は向いていました。
そう私は思いました。
流行は、いつか過ぎ去ります。
でも、文化は、根を張って、世代を越えて受け継がれていく。
今回のコラボレーションも、その大きな志の中にある、ひとつの挑戦なのだと、私には感じられました。
公式テイスティングノート
香り:和柑橘を思わせるしっとりとしたフルーティーさにチョコレートやシナモンのような心地よい樽香。輪郭と陰影を描くスモーキーフレーバーは次第に爽やかな潮風を帯びてゆく。
味わい:古木を思わせる味わい深いほろ苦さから、モルティな芳ばしくふくよかな甘みが広がり、燻製香を纏ったグレープフルーツのような余韻が長く続く。
コメント:伸びやかなふくよかさと柑橘類を思わせる爽やかさを持った味わいに、多層的で力強いスモーキーフレーバーがせめぎ合いながらも拮抗した調和をみせるジャパニーズブレンデッドモルト。
「せめぎ合いながらも、拮抗した調和」。
私が三郎丸を好きな理由のもうひとつは、ボトル一本一本に、いつもストーリーがあるから。
「切磋琢磨して、高め合える」
そんな相手の顔を思い浮かべながら、ぜひ飲んでみて!
造り手の想いに触れたとき、ウイスキーはもっと美味しくなる。
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。

このボトルについて
三郎丸 龍虎は、Bar Little Happinessの店頭でお楽しみいただけます。
また、店頭では小瓶(量り売り)でお持ち帰りいただくことも可能です。
お時間が限られている方、アルコールに弱い方、旅の記念に一本お持ち帰りいただきたい方にご利用いただいております。
広島市中区流川町・月〜土 19:00〜24:30 日〜24:00
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【谷本からの補足】この記事は、実際の訪問体験や公式情報をもとにしていますが、一部に谷本個人の考察や解釈が含まれます。一人のウイスキーLOVERの独り言として、お楽しみいただければ幸いです。
【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto) 株式会社 Little.m 代表取締役 / オーナーバーテンダー
広島県広島市で20年続くRum&Whisky専門店「Bar Little Happiness(リトルハピネス)」店主。
2006年の創業以来、ウイスキーとラムの感動を伝える専門家として活動しています。
バックバーには1,000本を超える希少なレア銘柄から、地元広島の「桜尾」まで幅広く取り揃えています。
• 多店舗経営: 本店に加え、カジュアルに愉しめる姉妹店「Rum&WhiskyハイボールBar」を直営。
• オンライン事業: 全国へ厳選ボトルを小瓶で届けるオンラインショップ運営。
• 執筆・情報発信: 専門コラム【ウイスキーとラムの手帖】を執筆。
・創業ストーリー:22歳、ワーキングプアだった私が見つけた光。
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!