ウイスキーは、人と人を繋ぐ──小諸蒸留所・イアン・チャンさんを迎えた夜(第1話)
2026.7.06
「私たちの共通言語は、ウイスキーです」
その一言から、この夜は始まりました。
長野から広島まで、新幹線で6時間。
台湾のカバラン蒸留所を世界一に導き、いま小諸蒸留所(KOMORO DISTILLERY)でウイスキーを造るイアン・チャンさんが、次世代を担う若いブレンダー2人を連れて、Bar Little Happinessに来てくださいました。
もう、楽しみで楽しみで楽しみすぎて、この日がくるのを心待ちにしていました!

4話にわたってお届けするこのシリーズ。
第1話の今回は、あえてウイスキーの中身の話は少しだけにして、この夜が生まれた「ご縁」の話から始めさせてください。
嘉之助・石原さんのSNSが、この夜のはじまりだった
イアンさんに初めてお逢いしたのは、小諸フェスティバルでした。
行こうと思ったきっかけは、嘉之助蒸溜所の石原さん。
石原さんが、小諸フェスでセミナーを担当することになった、とSNSにあげていたんです。
その言葉の端々から、これは石原さんにとって、とてもメモリアルなセミナーなんだな、というのが伝わってきました。
だったら、この晴れ舞台に行かないわけにはいかない!
既に、イアンさんのセミナーはチケット完売しており、私が購入できたのは、「3蒸溜所クロストーク」の、一番後ろのチケットでした。
そうして訪れた小諸フェス。
そのとき小諸フェスで感じたこと、私なりに掘り下げた小諸蒸溜所については、別の記事にまとめています。
客席のひとりにすぎなかった私に、後日、声をかけてくれたのは、イアンさんの方でした。
「リトルハピネスで、テイスティング会をしてもらえませんか?」
正直、何かのドッキリかと思いました。
ランチに広島までお越しいただくその日まで、もしかしたらドッキリかもしれない、と半分本気で疑っていたほどです。

「受けてくれてありがとう」なんて言ってくださいましたが、 こんなお誘い、断る人なんていないですよ。
今回のテイスティング会は、11席限定。
告知するやいなや、すごい数のご応募をいただいて、超プレミアムチケットになりました。
なにより嬉しかったのは、昔リトハピにお越しくださったことのある県外のお客様までが、たくさん手を挙げてくださったこと。
広島の、小さなバーの一夜に、県をまたいで人が集まる。
ウイスキーには、そういう力があるんだなと、あらためて思いました。
ご応募くださったのに、お席をご用意できなかった皆様、本当に申し訳ありません。
ささやかなギフトをご用意していますので、ご来店の際に「応募した」とお声がけください。
お金がなくなった私を、繋いでくれたもの
その「ご縁」で、忘れられない出来事があります。
この夜のほんの数日前、私は台湾のカバラン蒸留所を訪ねていました。

ところが、思った以上にキャッシュレスが進んでいなくて。
両替した現金では、タクシーに乗るお金がどうしても足りなかったんです。
目的地まで、あと少し。なのに、手持ちが足りない……
本当に、困り果てていました。
イアンさんにメッセージを送ったら、イアンさんはずいぶん心配してくれて、「ちゃんとホテルに戻れた?」とわざわざ連絡をくれました。
でも、その時間には、私はカバラン蒸留所で出会った人たちとすっかり仲良くなっていて、台北の街で一緒にご飯を食べていました。
「ほら、これがウイスキーが人を繋ぐということです」
イアンさんは、そう言って笑いました。
知らない土地で、言葉も違って、お金もなくて。
それでも、ウイスキーが好きという一点だけで、人と人は繋がれてしまう。
イアンさんの師である、故ジム・スワン博士(Dr. Jim Swan)は、生前こう言っていたそうです。
「ウイスキーは、人と人の間の潤滑油のようなもの。 物事を滑らかにつないでくれる。」
一つのご縁が、また次のご縁を連れてくる。
そんな不思議な力を持っています。
堅くならなくて、いい
会の冒頭、イアンさんは、まずこう言いました。
「今夜は、そんなに真面目にならなくて大丈夫。リラックスして過ごしてください。
ウイスキーは、人をつなげる飲み物ですから」と。
その言葉は、ただの挨拶ではありませんでした。
イアンさんは、来てくださったお客様ひとりひとりに、お土産を手渡ししてくださいました。

小諸蒸留所の、ピンバッジと、ノート。
世界中を飛び回る造り手が、広島の小さなバーの一夜のために、そこまで心を配ってくれる。
その一つひとつに、イアンさんの人柄がにじんでいました。
肩書きも、国籍も、飲めるお酒の強さも、関係ない。
ただ「ウイスキーが好き」という気持ちだけで、同じテーブルを囲む。
イアンさんが言う「共通言語」を、この夜、みんなが体で感じていたと思います。

素晴らしい夜でした
会の終わりに、イアンさんは、少し照れたように、こんな夢を話してくれました。
いつか、フォルクスワーゲンのキャンピングカーを買って、日本中を一周してみたい、と。
世界一の蒸留所を育てた造り手が、思い描く夢が、それ。
なんだか、その飾らなさが、この夜のすべてを物語っている気がしました。
そして最後に、イアンさんはこう言い添えました。
「お時間があれば、ぜひ小諸へ。蒸留所の空気を、じかに感じてほしい」
締めくくりは、Bar Little Happinessに集まった全員で、一枚の集合写真。
カメラを向けると、なぜかみんな、少し緊張した面持ちで。

「もっと笑ってください〜!」なんて声をかけながら撮ったその一枚には、この夜のやわらかさが、そのまま写っている気がします。
言葉も、生まれた場所も、歩んできた道も違う人たちが、
「ウイスキーが好き」というただ一点で、同じ夜を分かち合う。
イアンさんの言うとおりでした。
ウイスキーは、人と人を繋ぐもの。
本当に、素晴らしくて、胸がいっぱいになる夜でした。
プレミアムチケットを手に集まってくださった皆様、本当に、ありがとうございました。
推しと推しが、共演した
そして、このテイスティング会のあと、もう一つ、私にとって忘れられない時間がありました。
広島・桜尾蒸溜所のマスターブレンダーたちとの、交流会です。
何を話したのか、その詳しい中身は、ここでは秘密にさせてください。

推しと推しが、リトハピで共演している。
それだけで、ただただ、たまらなく幸せでした。
桜尾のメンバーには、小諸のニューボーンたちを。
小諸のメンバーには、桜尾のウイスキーを。
リトハピに置いてある限定ボトルまで引っぱり出して、みんなで飲み比べて。
台湾語も、日本語も、英語も入り混じりながら、いろんな意見が飛び交いました。
私が心から推している造り手と、また別の、大好きな造り手。
このお二方が会って話したら、絶対に何かが生まれる。
それが何なのかは、分からない。
分からないけれど、会って話したら、絶対にケミストリーが起こる。
そう、確信していました。
だからこそ、どうにか実現させたくて!!
無理を承知でスケジュール調整をお願いしました。
奔走してくださった小諸蒸溜所・澁谷さん、桜尾蒸溜所・竹内さんに、心から感謝申し上げます。
造り手同士が、言葉の壁を越えて、互いの一杯を手に語り合う。
その光景を目の前で見られただけで、もう胸がいっぱいでした。
これもまた、ウイスキーが繋ぐご縁そのものです。

さて、次の第2話からは、いよいよこの夜の主役――小諸蒸留所のウイスキーそのものを、じっくりご紹介していきます。
桃のように香るニューメイク、50年かけて湧く水、クリスマスに焚く優しいピート。
イアンさんが一杯ずつ語ってくれた、その奥深い世界へ。
― 小諸蒸留所・イアン・チャンさん テイスティング会シリーズ ―
次の記事 → 第2話:小諸蒸留所のニューメイクと、50年かけて湧く水
小諸蒸留所のイアン・チャンさんを迎えたテイスティング会にて。 Bar Little Happiness/谷本美香
📍 Bar Little Happiness
広島市中区流川町5-14-1F
月〜土:19:00〜24:30 / 日:〜24:00
(最終入店・約1時間前)
定休日:ほぼ年中無休
ご予約・お問い合わせは、公式LINEから🥃
🔗 オンラインショップ:https://shop.little-happiness.jp/