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三郎丸蒸留所見学体験記①|ウイスキー界のエジソン、稲垣貴彦氏の志に魅了された日

2026.1.23
三郎丸・稲垣貴彦社長とBar Littel Happiness 谷本美香が、貯蔵庫で対談している

広島から富山、念願の三郎丸蒸留所へ。稲垣貴彦社長の「高い志」と再会し、一人のファンとして心を奪われたプロローグ

念願だった三郎丸蒸留所を訪問させていただきました。

もう、素敵すぎて、完全に心を奪われてしまいました!

皆様にもぜひシェアしたく、全5回にわたってじっくりと書き綴っていこうと思います。

今回は、光栄にも、ブレンダーであり経営者である稲垣貴彦社長にご案内いただきました。

なんて贅沢な時間でしょう!

実は、稲垣社長とは数年前に一度お会いしたことがありました。

今回の訪問で彼の高い志に触れ、

「なんで始めたばかりのあのホットな時に、その想いを深く聞いておかなかったんだろう!」と、ものすごく後悔しています。

それくらい、今回改めてお会いして、稲垣貴彦という人間に魅了され、深い尊敬の念が沸き上がりました。

売上構成比を10%から80%へ。日本ウイスキーの「生存」を賭け、壮大なエコシステムを描く稲垣社長の圧倒的な視座

稲垣社長は、「自分のありたい姿、実現したい美しい未来」が明確にある人で、驚くほど視座の高い方だと感じました。

その高い志が、単なる理想で終わらず、しっかりと「右肩あがりの業績」に結びついているのがまた凄いのです。

かつては売上の1割にも満たなかったウイスキー事業を、今や全体の8割にまで成長させたその手腕は圧巻です。

朝10時にはすでに観光バスが停まり、お土産屋さんに人がひしめき合っている光景が、その成功を何よりも証明していました。(45000人が訪れるそうです)

三郎丸蒸溜所の併設ショップ。木目を基調とした落ち着いた店内に、蒸溜所限定ウイスキーやオリジナルグッズが整然と並んでいる様子。朝10時で人で賑わっていた

しかし、私が一番心打たれたのは、その数字の裏側にある「覚悟」です。

「自社のことだけを考えていては、ジャパニーズウイスキーという産業そのものが立ち行かなくなる」

そんな強烈な危機感を背景に、彼は三郎丸の再興と、日本のウイスキー界という大きなエコシステムの整備を、もはや切り離せない「一つの志」として捉えてる___私には、そう見えてなりませんでした。

三郎丸蒸溜所の歴史年表。1952年のウイスキー製造免許取得から、サンシャインウイスキーの誕生、近年の「三郎丸0 THE FOOL」や「1 THE MAGICIAN」「2 THE HIGH PRIESTESS」など、歴代ボトルの発売経緯が記された壁面展示。

創業家に生まれ、100年を超える歴史と凄まじいプレッシャーの中で経営の舵を取っているにもかかわらず、案内してくれる時の彼は、お話が始まると本当に魅力的で、どこまでも少年のようなんです。

独学でCAD(設計ソフト)を習得して自ら図面を引き、世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON」や、自動樽削り機「バレルロール2」で数々の特許まで取得してしまいました

若鶴酒造・三郎丸蒸溜所の「バレルロール2」。ポッドスチル「ZEMON」と並び、効率的な樽管理を実現する蒸溜所設備。クラフトウイスキーの製造現場で使用され、特許も取得している

若鶴酒造・三郎丸蒸溜所の「バレルロール2」。ポッドスチル「ZEMON」と並び、効率的な樽管理を実現する蒸溜所設備。稲垣社長が特許を取得

趣のある外観とは裏腹に、設備やシステムはIT化が驚くほどに進んでいます。

まだ電車賃も現金で払うようなアナログな文化が残る富山という土地において、彼の先を見据えすぎたプランは、当初ほとんどの人に伝わらなかったはずです。

自ら「0→1」を成し遂げ、爆速で突き進む爽快な姿の裏側で、彼がどれほどの深い孤独と戦ってきたのか。

言葉にできない葛藤や重圧と向き合ってきた歩みが、勝手ながら私の胸には去来しました。

また、その孤独を吹き飛ばすくらいに、夢中になり、没頭していたことも、その瞳を見れば確信できます。

何十年後かには、この令和の変革期を振り返り、「ジャパニーズウイスキー界のエジソン」として歴史に刻まれているに違いない。

そんな予感さえ抱かせる圧倒的な熱量が、そこにはありました。


100年の歴史を繋ぐ「大正蔵」に宿る、造り手の狂おしいほどの愛。足元に発酵槽が広がる、五感を刺激する仕掛けの数々

「ウイスキーが大好きな人が作った」ということが、建物からもダイレクトに伝わってきます。

戦災を免れた「大正蔵」という重厚な歴史を活かしながら、足元から発酵槽が見えるためにガラスで抜かれた床や、隠し扉のような演出など、至る所にワクワクする仕掛けが散りばめられています。

三郎丸蒸溜所の見学通路にある、足元が透明なガラス床の仕掛け。真下に広がる巨大な発酵室を俯瞰できるユニークな構造。富山県のウイスキー聖地巡礼で必ず撮影される人気スポット。
若鶴酒造・三郎丸蒸溜所の隠し扉の向こう側。ここでしか飲めない「三郎丸」のカスクストレングスを、秘密の部屋で楽しめる

新しいことを次々と実行されているので、周囲では相当なハレーションが現在進行形であるはずですが、そんなことを微塵も出さず、ただただ、ご自身の目指す未来のために進んでいます。

三郎丸のウイスキーという「作品」の素晴らしさはもちろんですが、私はそれを生み出す「稲垣貴彦」という男の生き様そのものに、完全に魅了されてしまい、ファンになってしまいました。

次回からは、その感動の細部について、世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON」の物語など一つずつ丁寧に紐解いていきたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。

出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。

三郎丸蒸溜所のマネージャー兼ブレンダー、稲垣貴彦氏と。世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」の開発者であり、ジャパニーズウイスキーの新たな歴史を創る中心人物との対談シーン。三郎丸蒸溜所見学

▶️第2話

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【谷本からの補足】 この三郎丸に関する記事は、実際に現地を訪問した体験を基に執筆していますが、一部谷本の個人的な考察や解釈が含まれています。 一人のウイスキーLOVERの独り言としてお楽しみいただければ幸いです。



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【この記事を書いた人】

谷本 美香(Mika Tanimoto)
株式会社Little.m 代表取締役/オーナーバーテンダー

広島・流川で2006年からウイスキーとラムの専門店「Bar Little Happiness」を営む。国内外の蒸溜所を訪ね、造り手の話をコラム「ウイスキーとラムの手帖」に綴っている。広島市優良技能者。

「ウイスキーもラムも、造り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」

【お店の情報】📍 Bar Little Happiness

広島市中区流川町5-14 Rolling流川 1F
月〜土 19:00〜24:30/日 19:00〜24:00(店主が蒸溜所へ旅に出る日はお休み)
ノーチャージ・予約不要

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