カバラン(Kavalan)とは|台湾の世界的ウイスキー、Ian Changの物語
2026.5.25
「I’m in!(一緒にやろう!)」
画面越しに、共同創業者となる島岡さんからの熱いプレゼンを聞いて、Ian Changさんが、出した答えだったといいます。
世界中のウイスキーラバーが憧れる、台湾・カバラン蒸留所のマスターブレンダーを15年務めた人。
その人が、台湾の地を離れ、日本・小諸の地で、新しい挑戦を始めた——。
その物語の原点が、台湾にあります。
カバラン(Kavalan)。
「亜熱帯では、ウイスキーは作れない」という、世界のウイスキー業界の常識を覆した、台湾の蒸留所です。
このコラムでは、カバランという蒸留所のすごさ、Ian Changさんという人物、そして私にとってのカバランへの想いを、推し活目線で書き留めます。
谷本の個人的な見解に基づいて構成されているのを前提にお読みください。
カバラン蒸留所とは——台湾・宜蘭の奇跡
カバラン蒸留所は、2005年に台湾・宜蘭(イーラン)県で創業した、台湾初の本格ウイスキー蒸留所です。
運営しているのは、台湾の大手食品飲料グループ・King Car Group(金車)。
日本でいえばジョージアのような、台湾を代表する国民的缶コーヒー「Mr. Brown(伯朗咖啡)」を擁する巨大食品飲料企業です。
最初のニューメイクスピリットが生まれたのは、2006年3月。
蒸留所建設の構想から数えても、決して長い歴史ではありません。
それなのに、カバランは——創業からほどなくして、世界のウイスキー業界の頂点を駆け上がっていきました。
- 2012年:Solist Fino Sherry CaskがJim Murray’s Whisky Bibleで「New World Whisky of the Year」に選出
- 2015年:Solist Vinho BarriqueがWorld Whiskies Awardsで「World’s Best Single Malt Whisky(世界最高のシングルモルト)」に選出
- 2016年:International Wine & Spirit Competition(IWSC)で「Worldwide Whiskey Producer of the Year(世界最優秀ウイスキー生産者)」を受賞
- 2026年:World Whiskies Awardsで「Distiller of the Year(年間最優秀蒸留所)」を受賞
- 創業以来、累計950以上の金メダル獲得
「亜熱帯では作れない」——常識を覆した蒸留所
カバランが、なぜここまですごいのか。
カバラン以前、世界のウイスキー業界には、ひとつの大きな常識がありました。
「ウイスキーは、スコットランドのような、寒冷な気候で作られるもの」
「亜熱帯気候では、本格的なウイスキーは作れない」
実際、カバラン創業時、創業者の李天才氏は、世界中の専門家から「不可能だ」と言われたといいます。
宜蘭の亜熱帯気候——夏は平均気温30℃を超え、湿度100%という、ウイスキー作りには過酷とされた環境を、欠点ではなく、武器として活かす方法を、独自に編み出しました。
熟成は猛スピードで進むけれど、樽の中身もまた、猛スピードで失われていく。
そのギリギリのバランスの上で、カバランの濃厚で芳醇な風味は生まれています。
カバランは、世界に証明しました。
「ウイスキーは、気候の壁を超えて、作れる」
私は、こう思っています。
亜熱帯地方でウイスキーが作れることを、この時代に証明したひとつの存在が、カバランだった。
そして、その事実が、世界中に新しい蒸留所が増えていく、ひとつの大きなきっかけになった、と。
インドのアムルット、オーストラリアのスターワード、台湾のカバラン——暖かい気候の蒸留所たちが、それぞれの土地の風土をハンディキャップではなく、個性として世界に問うていく。
その大きな流れの中で、カバランは確実に、重要な役割を担った蒸留所のひとつだと私は思います。
「自分たちの気候だからこそ、できるウイスキーがある」
今や「New World Whisky(新世界ウイスキー)」という言葉が、業界で当たり前のように使われる時代になりました。
スコットランドだけがウイスキーを語る場所ではない。。。
その認識を世界に根付かせた立役者のひとつが、カバランだと私は勝手に思っています。

Ian Chang——カバランを支えた人
そのカバランを、創業から15年にわたって技術の最前線で支え続けてきた人物が、Ian Chang(イアン・チャン)さんです。
カバラン創業のチームの中心は、創業者・李天才氏、技術コンサルタントとしてゼロから蒸留所を立ち上げた故・Dr. Jim Swan(ジム・スワン博士。”ウイスキー業界のアインシュタイン”とも称された人物。2017年逝去)、そして若手として参加したIan Chang——この3人でした。
Ian Changさんは、2005年、まだ蒸留所が建設中の段階から、ウイスキー作りの経験ゼロでこのプロジェクトに加わりました。
英国・Reading大学で食品工学を学んだバックグラウンドを持つ青年が、King Car Groupの募集に応募し、味覚テストに合格して入社。
最初の1年間は、ひたすらウイスキーの本を読み続けたといいます。
転機は2006年、Dr. Jim Swanとの出会い。
Ian Changさん自身が「公式な学びはここから始まった」と振り返るほど、ジム・スワン博士からウイスキー作りの全てを叩き込まれていきました。
やがて二人は世界中のカスクサプライヤーを訪ね歩き、カバランの個性を確立するブレンディングを磨き上げていきます。
その結果、Ian Changさんは中国語圏で初のマスター・ディスティラー兼マスター・ブレンダーとなり、個人として500を超える金メダル・トロフィーを獲得。
2017年のDr. Jim Swan逝去後も、その哲学を受け継ぎ、カバランを世界的なブランドへと育て上げていきました。
そして2020年、Ian Changさんは、新しい挑戦の地を選びます。
日本・長野県小諸市、標高910m、浅間山の麓に建つ、小諸蒸留所のマスターディスティラー & ブレンダーへの就任です。
私とカバランの出会い——あの青いボトル
私が、カバランと出会ったのは、2010年代の前半。
リトハピを始めて、5〜6年経った頃のことだと思います。
最初に手にしたのは、コンサートマスターではなく、ソリストシリーズの一本。
正直、ラベルの色しか覚えていないんです。青いボトルでした。
口に含んだ瞬間、もうびっくり! なんて濃厚で芳醇なウイスキーなんだ!!。
濃厚という言葉では足りない。
たしか1万円くらいだったような記憶があります。
当時のウイスキー価格からすると、高いなーって印象でしたが、密度の高さとトロピカルでなんともいえない満足感。
それまで私が知っていたウイスキーの世界には、なかった味でした。
その日から、私はカバランのソリストシリーズに、心を奪われていきました。
濃厚で芳醇…
カバランのソリストシリーズには、その言葉がいちばん似合うと、今でも思っています。
カバランから、私が学んでいること
ソリストシリーズに出会ってから、もう10年以上。
カバランを飲み続ける中で、ずっと感じてきたことがあります。
「このウイスキーには、誰かの強い意志がある」
ただ「美味しい」だけじゃない。
「台湾で、世界に通用するウイスキーを作る」という、誰かの強い想いが、ボトルの中に、確実に込められている。
それが、私には「美味しさ」として、伝わってきました。
そしてもうひとつ、カバランから私が学んでいるのは、経営者としての姿勢です。
新しいことに、果敢に挑戦し続ける姿勢。
ウイスキーの開発を、長期にわたって支え続けられる、コーヒーや飲料という別のキャッシュポイント(King Car Group)が、母体として存在していること。
研究開発のスピードが圧倒的に早く、ブラッシュアップが止まらないこと。
そして何より….体験価値に、明らかに力を入れていること!
カバラン蒸留所を訪れた人の話を聞くと、面白いことに気づきます。
「もともと、それほどウイスキーが好きだったわけではない」という人がほとんどなのです。
台湾観光の一環として、カバラン蒸留所を訪れた。
そこで体験した蒸留所の世界観に魅了されて、それをきっかけに、ウイスキーを飲むようになった。
カバランは、「カバランのために台湾に行く」人だけを、相手にしているわけではなく、 「せっかく台湾に来たから、寄ってみよう」という人を、しっかりと拾い上げて、ファンに変えていく。
そういう、美しい構造を作り上げていました。
これは、たくさんの観光客が訪れる広島において、本当に参考になる構造だと感じています。
そして、リトハピも、そうでありたい。
広島という街を訪れたから、せっかくだから…!
そんな方が、ふらりとカウンターに座ってくださって、ウイスキーやラムの世界に、出逢い直していく。
そんな場所であり続けたいと、強く思っています。
カバランから学んでいるのは、ウイスキーだけじゃない。
「人を惹きつける場所のあり方」そのもの。
リトハピのカバラン・ラインナップ
現在、Bar Little Happinessでお楽しみいただけるカバランは、ソリストシリーズを中心に揃えています。

それぞれの樽が違えば、味わいの方向性も全く異なります。
ぜひカウンターで体験してほしいと思います。
運命のような巡り合わせ——カバランの地と、Ian Changさんと
2026年3月、私はある場所にいました。
長野県小諸市、小諸蒸留所のフェスティバルです。

そのフェスで、私はIan Changさんが手がける小諸蒸留所のセミナーに参加していました。
一番後ろの席から、Ian Changさん、嘉之助蒸留所の石原さん、安積蒸留所の黒羽さんのセッションを聞いていました。
テイスティングで用意された小諸蒸留所のウイスキーは、ルビーポート樽。

「綺麗な、赤い色」
加水されている。それなのに、ニューポッティ(蒸留したての荒々しい香り)が、まるでない。
こんなにクリーンで、こんなに完成された方向性が、すでに見えている。
蒸留開始から、3年経っていないというのに…
この人は、天才なんだって思いました。
もちろん、イアンチャンの名前は知っているけれど、そこまで深く知っていたわけではなかったからです。
ただカバラン美味しいなーって思ってただけ。
そして、もうひとつ強く感じたことがありました。
これほど世界的に著名な方であるにもかかわらず、登壇されているIan Changさんは、隣の蒸留家たちへの敬意、聞いている人たちへの敬意。
相手を尊重する姿勢を、一切崩されないのです。
きっと、こんな素敵な姿勢の人の作るウイスキーは、調和を大切にした、美しいものが出来上がるのだろうと感じました。
そして、こう思ったのです。
「ルーツを辿らないと!」
イアンさんが、15年かけて磨いたカバランという原点。
小諸の原酒のクリーンさの源流が、必ずそこにある。
自分の目で、自分の舌で、確かめないと!!
7月のチケットを取る
3月のフェスから帰ってすぐ、7月のチケットを取りました。
カバラン蒸留所の見学予約も、すぐに取りました。
原油も、まだ高騰する前のタイミング。
航空券もリーズナブルに取れて、ラッキーだったと、後から振り返って思います。
すべての準備が、淡々と進んでいた、その時——
一通のメール
Ian Changさんサイドから、メールが届いたのです。
「リトハピで、テイスティング会をしませんか」と。
最初に思ったのは——「ドッキリかな」でした。
でも、メールの内容は、あまりにも具体的でした。
「こんなに手の込んだドッキリは、わざわざやらないだろう」
そこで、ようやく確信に変わりました。 本当に、来てくださるんだ、と!
7月4日(土)、Bar Little Happinessにて
Ian Changさんと小諸蒸留所について、より深く知りたい方は、こちらのコラムもどうぞ: → KOMORO蒸留所・推し活コラム
▶︎ご参加希望の方は↓
公式LINEから案内を受けてください!
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カバラン(Kavalan)は、亜熱帯地方でウイスキーが作れることを、この時代に証明したひとつの蒸留所です。
そして、世界中に新しい蒸留所が増えていく、大きなきっかけのひとつになった存在だと、私は思っています。
そのカバランを15年磨き上げたイアンさんが、今、日本の小諸で、新しい挑戦をしています。
そして、イアンさんが磨いたカバラン15年のルーツの地を、私は7月にようやく訪れます。
さらにその2日後、Ian Changさんご本人をリトハピのカウンターにお迎えする——。
すべてが、嘘みたいに繋がっていて、不思議でなりません。
「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!