リトハピ20周年ボトルと、Litoの物語
2026.6.29
Bar Little Happiness 20周年の記念ボトルとして、桜尾蒸溜所の「桜尾 シングルカスク 100%国産モルト 1stフィルバーボンバレル〜旅するLito〜」をリリースします。
このボトルのラベルには、リトハピのキャラクターが描かれています。
名前は、「Lito」といいます。
Bar Little Happinessの守り神として生まれた、小さな精霊です。
このボトルがどう選ばれたのか。
Litoがどう生まれたのか。
20周年に向けて、同じ時期に並行して進んでいた、二つの物語についてお伝えします。
桜尾蒸溜所へ向かった日
その日は、暖かくなってきたはずの季節なのに、少し寒い日でした。
広島から桜尾へ向かう道中、私はずっと落ち着かないまま、ドキドキしていました。
何度も通った場所のはずなのに、その日だけは違って見えたのです。
Bar Little Happinessの20周年。カスク選定の日でした。
バーのためのシングルカスクは、桜尾蒸溜所として初めてのこと
桜尾蒸溜所は、特定のバーのためにシングルカスクをボトリングするということを、これまで一度もされてきませんでした。
私も、今まで何度もお願いしては、その都度お断りされていました。
それでも諦められなかったのは、桜尾というウイスキーが、広島という土地が、どうしても20周年に必要だったからです。
そして今回、バーのためのシングルカスクボトリングという、桜尾蒸溜所として初めての扉を、リトハピのために開いていただきました。
これまで守ってこられた一線を越えていただいた。
感謝の気持ちと、桜尾蒸溜所にとっても、リトハピにカスクを提供してよかった!と思ってもられる状態を作りたいと、心から願いました。
9パターンのサンプル
蒸溜所に着くと、9パターンのカスクサンプルが並んでいました。
桜尾と戸河内、それぞれ複数のサンプルをご用意くださっていました。

香りで、ほぼ決まりかけていました
香りだけで、私の中では、ほぼ答えが出かけていました。
桜尾 100%国産モルト 1stフィルバーボンバレル。
派手さも、奇抜さもありません。
バーボンバレルという、世界で最もありふれた熟成樽。
「香りだけだったら、決まっちゃいますね。飲む前に」
思わずそうお伝えしていました。
それでも、戸河内アイラに惹かれていました
ほぼ決まりかけていたのに、他のスペックを見ると悩み始めてしまいます。
戸河内のアイラカスクフィニッシュが、頭から離れなかったのです。
広島の蒸溜所のアイラカスク——
この組み合わせは、業界の方々が必ず反応してくださる一本になるだろうと思いました。
話題になり、語っていただける一本。
ウイスキーバーがモルトファンのために出す、マニア受けするカスク。
実は、桜尾と戸河内、両方ボトリングしたい。
そう、お伝えもしていました。
でも、2つはどうしてもご用意できないとのこと。
今回は1つだけということになりましたが、それでもこのような貴重な機会。
これ以上、わがままをいうのはやめました。
3時間、頭の中を通り過ぎたもの
桜尾バーボンバレルか、戸河内アイラカスクか。
私は、3時間、迷いました。
迷いながら、Fさんとはウイスキー業界のお話、桜尾の未来、他愛のない世間話を交えながら、何度もテイスティングを繰り返していました。
「いつまででも良いですよ」
Fさんはそうおっしゃって、本当に急かさずに付き合ってくださいました。
正直に言うと、私はずっと「迷惑だな、申し訳ないな」と思っていました。
3時間もお時間をいただくなんて、普通に考えれば失礼なことです。
でも、Fさんとお話ししながら、私の頭の中では、20年で出会った方々の顔が、次々に浮かんでは消えていました。
リトハピのカウンターでウイスキーを愉しむお客様たち。
スタッフとして、一緒にカウンターに立ってくれた人たち。
世界中の蒸溜所で、お話を聞かせてくださった造り手の方々。
リトハピのために、良いボトルを回してくれた信頼する酒屋さんたち。
「あの方なら、この一本をどう感じてくださるだろう」
「あのお客様だったら、何と言ってくれるだろう」
そういう声が、頭の中で交差していました。
Fさんとお話をしながら、頭の半分では、ずっと20年分の顔と対話していたのだと思います。
「これにします」
最初の香りに、もう一度還りました。
結局、一番最初にピンときた、あのカスクでした。
今振り返ると、あの3時間は、必要な時間でした。
(Fさん付き合わせてごめんなさい🙏)
あそこでちゃんと悩んで、20年分の顔を一人ひとり思い浮かべる時間が取れたから、あとになって、あっちにすればよかったとか考えなくてすみました。
そして、Litoのこと
このボトルが決まる約1年前から、私の中ではもう一つの物語が動いていました。
リトハピにも、目に見えるかたちの守り神がいたらどうだろう。
20年積み重ねてきた想いを、目に見えるかたちにしたい。
カウンターの片隅にいて、旅先にも一緒に連れて行けて、ボトルにも登場する
——そんなお守りのような存在を。
そう考えるようになったのは、創業からほとんど休まずに走り続けてきた私が、初めて立ち止まる時間を持てたからでした。
立ち止まって、リトハピと共に過ごした月日を見つめ直す時間の中で、ふと、そう思ったのです。
まず、物語を書き、コンペ形式で募集することにしました。
リトハピの守り神となる存在には、デザインだけでなく、物語が必要でした。
広島の片隅で、20年間灯り続ける小さなバーがある。
ある日、店主は一杯のウイスキーをこぼしてしまった。
拭き取ろうとしたが、琥珀色のしずくはカウンターに染み込み、 そのまま時間の中で眠り続けた。
数年後。
そのしずくは店主の想いと、お客様たちとの時間、 ここで交わされた言葉や感情を吸い込み、 小さな精霊の姿となって現れた。
Litoは語らない。
ただ、カウンターの片隅でそっと見守り、 ときに旅に出て、新しい物語を連れて帰ってくる。
それは、リトルハピネスの想いそのもの—— お店の記憶と未来を守り続ける、お守りの化身。
ウイスキーをこぼすこと。
完璧ではないこと。
それでも積み重ねた日々。
広島という土地。
旅と帰還。
これらは全部、私が20年やってきたリトハピそのものでした。
この物語を、コンペの依頼文に添えて公開しました。
10日間で、120件
コンペを公開して、たった10日間で、120件のデザイン案が届きました。
同じ物語を読んだはずなのに、まったく違うLitoが、次々と私のもとに届きました。
ある人のLitoは丸くて柔らかく、ある人のLitoはもっと尖っていました。
ある人のLitoはもみじのしっぽが強調され、ある人のLitoはハートの形が前面に出ていました。
私が書いた一つの物語が、120人のクリエイターの手の中で、120通りの命を持って生まれてきました。
その中から、私の物語を一番深く汲んでくださった方のデザインを選ばせていただき、Litoが生まれました。

Lito誕生
選んだデザインを、さらに細部まで詰めていく作業が始まりました。
クリエイターの方とやり取りを重ねながら、一つひとつのパーツに意味を込めていく。
「ここを、こうしてほしい」
「この想いを表現してほしい」
——フィードバックを送るたびに、Litoの輪郭が少しずつ立ち上がってきました。
20年間の想いが、走馬灯のように駆け巡りました。
22歳、駐車場の一角の、わずか数坪のコーヒーを出す店から始めた創業の日々。
最初のウイスキー、バルヴェニーとの出逢い。
一緒にカウンターに立ってくれた歴代のスタッフたちと、ぶつかりながら成長させてもらった日々。
一人また一人と来てくださったお客様の顔。
世界中の蒸溜所で出逢った造り手たち。
/
涙が止まらないまま、デザインのフィードバックを送る。
なぜ泣いているのか、自分でもうまく説明できませんでした。
ただ、何かが体の奥から溢れ出てくる、その感覚だけがありました。
/
Litoのデザインに、込めたもの
走馬灯のように駆け巡った感情は、言葉になりませんでした。
Litoのデザインの一つひとつのパーツに、はっきりと意味を込めていきました。
顔のハートは、リトハピの窓の形です。


当時、私が手書きで描いたハートを、その窓に重ねてくり抜きました。
そして、その歪み。
完璧にはできなかったけど、それは真剣に積み重ねた日々の象徴です。

頭の上の角のような突起は、ポットスチル。
ウイスキーやラム酒を生み出す蒸溜器の形です。
顔の周りの並々は、感情の揺らぎです。
20年カウンターに立ってきた中で交わされた、無数の感情。
喜び、悲しみ、出逢い、別れ、感動——
そのすべての揺らぎが、Litoの顔の周りに波となって渦巻いています。

丸い体は、お店の歴史そのもの。20年積み重ねてきた時間の丸みです。
胸の紅葉は、広島を思わせるもみじ。
旅で得た体験や物語を抱えて、またここへ持ち帰るための印です。
Litoは、少し歪で不思議でアンニュイな顔をしています。
Litoには、20年分のリトハピのすべてが、形として刻み込まれています。
そして、言葉にならなかった感情のほうは、Litoの中に眠っています。

このボトルを手に取ってくださった方へ
Litoは、ボトルに乗って旅に出ました。
広島の片隅から、全国のBarのカウンターへ。
そうして、あなたと出逢いました。
その出逢いは、きっと、「必然」です。
ウイスキーを愛し、Barという場所を愛する。
それだけで、私たちはもう、同じ世界を旅する仲間です。
Litoが私の手を離れて、あなたのところへ旅をしていった先で、LitoはあなただけのLitoになりました。
これからも、ウイスキーを愛する旅を、ご一緒させてください。
いつかどこかのバーで、あなたとLitoが出逢えますように…。
「ウイスキーもラムも造り手の想いに触れた時、もっと美味しくなる。」
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
このボトルについて

桜尾 シングルカスク 100%国産モルト 1stフィルバーボンバレル
Bar Little Happiness 20周年記念ボトリング〜旅するLito〜
カスクストレングス 62%
171本限定
一般販売はしておりません。全国のバーでのみお取扱いいただいております。
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【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto) 株式会社 Little.m 代表取締役 / オーナーバーテンダー
広島県広島市で20年続くRum&Whisky専門店「Bar Little Happiness(リトルハピネス)」店主。
世界中の蒸溜所を訪れ、造り手との対話を重ねてきた一次情報を発信し続けている。
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!