【感謝と決意】すべての出逢いにありがとう。Bar Little Happiness 20周年へ続く、納得の旅路
2025.12.01
すべてがつながった2025年 – 選ぶ勇気と20周年への想い
2025年も、ご愛顧いただき、ありがとうございました。
今年ももう師走に入りました。
この一年は、私にとって本当に深く、長い時間を超えて「すべてが繋がった」と感じる一年でした。
『高すぎて売れない』『ハイテクすぎる』と批判されたやり方で、なぜ世界中から人が集まるようになったのか。
経営者として迎える20周年を前に、想いをブログにしました。
・旅路の始まり – ニュージーランドでの気づき
・迷いの中で見えてきた真実
・他者の幸せを追求することの限界
・恐怖を乗り越えて選んだ道
・万博という哲学の旅 – 決断への確信
・美しさが引き寄せた奇跡
・本当の幸福とは
・20周年への感謝と決意
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##旅路の始まり – ニュージーランドでの気づき
1月、思い切って長期休暇を取り、ニュージーランドへ。
雄大な自然の中で、日本の慌ただしい日常を離れ、自分自身と向き合う時間を持ちました。
きっかけはシンプルで、尊敬する経営者の先輩と一緒に旅をしてみたかった——それだけです。
その先輩の何気ない一言や問いかけが、私の中でずっと巡り続けていました。
即答できなかった質問、過去に勧められた本——
そんな断片的な言葉たちが、気づけば心の奥深くで、私の内面に問いを投げかけ続けていたのです。
その時はまだ、この旅が一年を通じた大きな変化の始まりだとは思ってもいませんでした。
##原点にあった悔しさ
思い返せば、創業当初の私を突き動かしていたのは「悔しさ」でした。
この仕事を馬鹿にしている人たちを見返したい。
バー業界を、もっと良い仕事にしたい。
その想いが、19年間の原動力となっていました。
どのように空間を設計し、どんな想いでこの場所を育ててきたのか——
その詳しい軌跡は、今年5月に綴った3部作に記しています。
**▶︎ [【特集】リトハピという場所ができるまで]
– [【前編】リトハピという場所]
– [【中編】選ぶ自由、選ばれる覚悟]
– [【後編】静かな納得と、小さな幸せ]
そして2025年、その「悔しさ」から始まった旅が、新しいフェーズへと進んでいったのです。
## 迷いの中で見えてきた真実
思えば、創業してからいつの間にか、「誰かのため」に働いてきたように思います。
「このボトルセレクトは高すぎて売れない」
「もっと世の中に合わせたほうがいい」
「従業員さんがストレスを感じないように…」
自分のやりたい世界を、周りに理解してもらえるような形に、働く従業員さんが納得しやすい形を模索してきました。
でも、いつの間にか、自分が本当に「美しい」と思う世界を、世の中に合わせる仕事へと変えてしまっていたのだと思います。
従業員の生活を守ること、給料を上げること、バー業界を良くしていくこと。
それ自体は尊いことだったけれど、そのために自分の心が完全に置き去りになっていました。
そして、自分が求めていた理想のビジョンが、もはや成立しないということを、長い時間をかけてトライ&エラーした結果、ようやく納得しました。
その瞬間、心の支えを失ったような気がして、
「私はこのまま経営を続けていけるのだろうか」
「原動力を手放して、どう生きていけばいいのだろうか」
と深く悩みました。
## 他者の幸せを追求することの限界
この19年間、ずっと考え続けてきたのは「どうしたら従業員を幸せにできるか」ということでした。
経営者として、働いてくれる従業員さんの幸福を第一に考えることは当然だと思っていましたし、それを実現することが、自分のビジョン達成への道と同義でした。
しかし、この想いは時として大きなジレンマを生み出しました。
目の前にいる従業員の未来が一番豊かになるように必死に取り組みました。
それは自己満足だったかもしれませんが、幸せの形は人それぞれだからこそ、まずはちゃんと稼げる会社にすることが重要だと信じていました。
けれど、そう努力するほど自問自答が深くなっていきました。
私の存在が、かえって余計な重荷になっているのではないか。そんな思いが頭をよぎりました。
従業員が求めることは人間として当然の気持ちであり、私にも理解できるものでした。
しかし、資本主義の現実は時として残酷です。
そんな複雑なことを知らずにいる方が、きっと平穏で悩みの少ない人生を送れるだろう——
でも、長期的には良くないと確信していました。
目の前の優しさと、長期的な厳しさ。
今の平穏と、将来への責任。
理解できる気持ちと、確信していた未来への危機感。
この相反する想いの間で、私は深いジレンマに陥っていったのです。
何が正しいのか、何が本当にその人のためになるのか、分からなくなっていきました。
この経験を通じて気づいたのは、他者の幸せを追求することには限界があるということです。
それは冷たい結論ではありません。むしろ、本当の意味での思いやりとは何かを深く考える契機となりました。
「この構造は変えられない」と潔く認めたことは、私にとって最大の合理的な経営判断でした。
もう誰も救おうとしなくていい——その解放感が、次の扉を開いたのです。
今振り返れば、経営者としても未熟な考え方だったと思います。
でも、あの葛藤があったからこそ、私はようやく次のフェーズに進めたのだと思います。
## 恐怖を乗り越えて選んだ道
ここ1.2年、私は怖さを抱えながらも、今まで「理解されるためには必要だ」と思ってやってきたこと、でも自分の中ではモヤモヤしていたこと、しかし成果はしっかり出ていたことを、あえて手放していきました。
経営と人生と、想い。
そういう大切にしていたと思っていたものの断捨離でした。
「自分が美しいと思うことだけをやる」、そう決めました。
それはそれは、とてつもない恐怖でした。
「全てを失ってしまうかもしれない」
でも、もう後戻りはできない。そう決めて実行に移しました。
## 万博という哲学の旅 – 決断への確信
大阪・関西万博に何度も足を運びました。
「いのちの未来」「null²」「いのちの動的平衡」・・・。
すべてのクリエイティブが、「いのち」の捉え方を、様々な方向から問いかけてきました。
特に印象深かったのは、選択肢が増えた現代において、それでも選ぶという意志の尊さ、「もう生きることの意味は考えなくていい」というメッセージと、終わること=失われることではなく、流れの一部になること。ひとつの循環の中にあるという概念に深く共感しました。
いのちの未来で「それでも選ばない選択の自由」に、null²では「記号を手放す」ことを体験し、動的平衡館で「存在すること自体が利他である」ことを理解した時、今辿り着いた道こそが、真の利他だったのだと深く納得できたのです。
## 美しさが引き寄せた奇跡
気づけば——
私が美しいと思う世界を求めて、日本中、世界中から人が集まるようになっていました。
かつて、「高すぎて売れない」「そのやり方は間違っている」と言われた商品セレクトや経営方針。
そして、ウイスキーやラムの魅力をより深くお伝えしたいという想いから導入したデジタルメニューに対しても、「なんでそんなにハイテクにするの?バーらしくない」と、従来のバー文化を大切にする方々からは批判されることもありました。
確かに、昔ながらのバーの良さ、アナログな温かさには計り知れない価値があります。
でも私は、伝統を大切にしながらも、お客様にウイスキーやラムの奥深い世界をより豊かに体験していただくために、明朗で安心な空間を作るために、人間にしかできないことに集中するために、新しい技術も取り入れたいと思ったのです。
それは皮肉にも、身近な人からずっと批判され続けたやり方でした。
「売上を上げるため」でも「給料のため」でもなく、自分が美しいと思う価値観を共有する人たちが集う場として機能し始めました。
そこに流れる時間や会話の質、心の充足感の深さ。
それこそが、何よりも大きな価値でした。
そして不思議なことに、その自分自身の心の満たされ方こそが、結果として売上や成果にも自然と結びついていたのです。

## 本当の幸福とは
自分が美しいと思う世界を表現して、その世界を「美しい」と思ってくれる人たちと出逢えること。
それが、今の私にとっての本当の幸福です。
今まで、私は「誰かのために」働いてきたと思っていました。
「自分が与えることで関係を保とうとする」という、無意識の「交換」があったかもしれません。
でも本当は、自分が美しいと思う世界を表現することこそが、結果として多くの人の心に響き、真の意味での「利他」になっていたのです。
「死もまた利他である」という言葉の意味が、ようやく腑に落ちました。
意図的に誰かのために何かをするのではなく、自分らしく存在すること自体が、すでに周りへの貢献なのです。
人生とは、自分が何かの役に立っているという実感が必要なのだと思います。
そして、その実感が深まるほど、もはや「自分のため」なのか「誰かのため」なのかという境界線が曖昧になっていく。
自分が充実していることが、自然に他者の充実につながっている。
そんな循環の中に身を置くことができた時、それは結果として成果にも結びついていきました。
自分が美しいと思うことを、同じように美しいと思ってくれる人たちに囲まれる。
「やっていること」「感じていること」「求めていること」がほぼ一直線に並んだ、自己一致の状態。
他人の期待や社会の評価を越えて、それは、これまでの全てが熟成され、昇華された状態でした。
## 20周年への感謝と決意
来年、Bar Little Happinessは20周年を迎えます。
ここまで支えてくださった皆さまに、心から感謝申し上げます。
常連のお客様、一期一会のお客様、様々な問いをくださった従業員の皆様、時には厳しいご意見をくださった方々も含めて、すべての出逢いがあったからこそ、今の私があります。
### 次の20年への想い
次の20年は、ライフワークとして、より美しい形に昇華していきます。
技術がどれほど進歩しても、AIがどれほど賢くなっても、人と人が同じ空間で過ごし、同じ時間を共有することの美しさは変わりません。
むしろ、デジタル化が進むからこそ、このアナログな空間の価値は高まっていくと確信しています。
人間だからこそできることに集中できるように、Bar Little Happinessは今後も進化してまいります。
記録に残らない夜が、記憶に残る夜になる。
そんな空間を、これからも大切に創っていきたいと思います。
### 営業スタイルについて
今年から、私自身も新しいライフスタイルを選択しています。
旅を続けながら、時々お休みをいただくようになりました。
4〜5時間営業で、以前よりお店が開いている時間は少なくなりましたが、その分、一回一回の時間をより濃密で特別なものにしていきたいと思います。
### 年末年始も皆様をお待ちしています
今年も大晦日、お正月、三が日も営業いたします。
一年の締めくくりに、新しい年の始まりに、Bar Little Happinessで特別感と感動を。
年末年始の営業時間など詳細は、インスタグラムなどで随時ご案内させていただきます。
(来年 1月13日〜22日頃まで、ラオスをはじめとする国内外のラム酒・ウイスキー蒸溜所を訪ねる旅に出ますので、お休みいたします。その様子は谷本個人のインスタストーリーにて配信する予定ですのでご興味のある方は是非フォローしてください。)
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##🥂2026年、Bar Little Happiness 20周年Yearへ。
今この瞬間が、儚いからこそ、尊く、美しい。
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出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香
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Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!