光と闇の時代。憧れと、現実と。
2026.3.06
Bar Little Happinessは、2026年で、創業20年を迎えます。
この1年は、これまで紡いできた「20の記憶」を、感謝を込めて振り返っていきたいと思います。
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2006年、22歳。
本屋で見つけた『憧れのカフェ』という一冊の本を片手に、見よう見まねで作り上げた「底辺DIY」の小さなお店。
そこから始まった私の20年は、23歳で触れた「光」と、出口の見えない「深い闇」を往復する日々でした。
憧れと、埋まらない距離:山崎蒸溜所での「300万円」
「ウイスキーが造られている現場を見てみたい」
そんな純粋な衝動に突き動かされ、大阪まで新幹線に乗ったのは23歳の頃です。
ネットに情報なんてほとんどなかった時代。
私にとってそれは、未知の世界への大冒険でした。
そこで目にした山崎蒸溜所の世界観は、ため息が出るほど美しく、ロビーに並ぶ原酒の輝きに胸が高鳴りました。
けれど正直なところ、当時の私はまだ「味」が苦手でした。
香りは好きだけれど、口に含むとアルコールに負けてしまう。
ウイスキーという文化への強烈な憧れと、それを受け入れられない自分の体質。
そのギャップがもどかしくて仕方がありませんでした。
案内係の方に「オーナーズカスク、300万円ですがいかがですか?」と聞かれた時の衝撃は、今でも忘れられません。
当時の私には想像もつかない大金。
サントリーさんの逞しい商魂に圧倒されるばかりでしたが、それでも「いつかこんな美しい世界の一部になりたい」という憧れだけを、お守りのように抱えて広島へ戻りました。
私にも飲めた! バルヴェニーがくれた「居場所」
そんな私の味覚の扉をこじ開けてくれたのは、近所のバーで出逢った「バルヴェニー」でした。
一口飲んだ瞬間、「私にもウイスキーが飲めた!」という感動が駆け抜けました。
それは、お酒が苦手な自分を否定し続けていた私に差し込んだ、救いのような光でした。
数年後、そのバーが閉店すると聞いた時、お店の開栓済みの在庫をすべて買い取りました。
経営に余裕なんて全くなかったけれど、あの時「飲む喜び」を教えてくれたバーテンダーさんへの、不器用で精一杯の感謝のつもりでした。
繁盛の裏側で、溺れていた日々
創業から1年半が経ち、現在の場所へ移転した頃。
私の「闇」の時代が本格的に始まりました。
移転の際にお願いした内装業者が跳んでしまい、店舗は野晒しのまま。
ようやくオープンしても、スタッフの遅刻や欠勤は当たり前。
警察や病院への迎え、他店との示談交渉に追われる毎日。
レジ金が消え、スタッフ同士の諍いも絶えませんでした。
世はリーマンショックの真っただ中。
広島・流川から300もの店が消えたと言われる時代に、なぜかリトハピだけは連日、満席でした。
外から見れば「繁盛店」の若き女性オーナーだったかもしれません。
けれど中身は、年上の男性従業員とどう向き合えばいいのか分からず、年下のバイトさんには「オーナーみたいにできません!」と泣かれる日々。
「誰か助けてほしい」と叫びたいほど自信がない自分と、それを隠すための「虚勢に近い活力」が、心の中で激しくぶつかり合っていました。
あの日々は「頑張った」というより、ただガムシャラすぎて記憶が抜け落ちています。
20年目の視点:あの暗闇が教えてくれたこと
リトハピ移転にかかった費用は、フル借金。
返済プレッシャー、お客様の期待、そして「従業員に認めてもらいたい」という焦り。
未熟だった私は、頑張り方を大幅に間違えながら進んでいました。
今の私なら、あの頃のボロボロの私に言えることがあります。
その苦しみがあったからこそ、自分一人で頑張る限界を知り、「仕組み」や「組織」の重要性を必死に学ぶことになったのだと。
そして、20年かけて一周回った今、ようやく、「たった一人の目の前のお客様を感動させる」という、あの22歳の頃のシンプルな原点に、確信を持って戻ることができたのだと。
あの「光」と「闇」のどちらが欠けても、今のBar Little Happinessはありません。
あの日出逢ったすべての苦痛も、憧れも、私にとっては必然だったのです。

「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto) 株式会社 Little.m 代表取締役 / オーナーバーテンダー
広島県広島市で20年続くRum&Whisky専門店「Bar Little Happiness(リトルハピネス)」店主。
2006年の創業以来、ウイスキーとラムの感動を伝える専門家として活動しています。
バックバーには1,000本を超える希少なレア銘柄から、地元広島の「桜尾」まで幅広く取り揃えています。
• 多店舗経営: 本店に加え、カジュアルに愉しめる姉妹店「Rum&WhiskyハイボールBar」を直営。
• オンライン事業: 全国へ厳選ボトルを小瓶で届けるオンラインショップ運営。
• 執筆・情報発信: 専門コラム【ウイスキーとラムの手帖】を執筆。
・創業ストーリー:22歳、ワーキングプアだった私が見つけた光。
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!