新春の厄払い。悪魔が「天使」に変わる、50年の魔法
2026.1.03
その昔、ラム酒は『キル・デビル(悪魔殺し)』と呼ばれていました。
この言葉が広まったのは17世紀頃ですが、ラム酒の歴史そのものは16世紀、カリブ海にサトウキビが持ち込まれた時代にまで遡ります。
そこには、ヨーロッパに莫大な富をもたらした砂糖経済の光と、その裏側にある重い歴史が刻まれています。
私は以前、アフリカのガーナへ足を運んだことがあります。
かつて奴隷貿易の起点となった、白く美しい、けれど悲しいほどに冷徹な城。
(ここに当時の写真を挿入)




その城の地下にある暗く冷たい部屋に閉じ込められた人々は、二度と戻れぬ海へと連れ出されていきました。
辿り着いた先で待っていたのは、人としての尊厳を奪われ、当時の経済を支えるあらゆる労働に投入される過酷な日々でした。
(ガーナの奴隷貿易についてと、ラム酒との繋がり、平和についておもうことを過去のブログに書いています。)
ラム酒もまた、その砂糖を中心とした巨大な経済システムの中から、副産物(糖蜜)を有効活用するために生まれ落ちたお酒です。
当時は、喉を焼くほどに強烈なアルコール。
それは、あまりに過酷な現実から一時的に意識を麻痺させ、心の中の「弱気という悪魔」を殺して動かし続けるための、切ない「ファイティング・アルコール」としての側面もありました。
それから数世紀が経ち、ラム酒は人々の手によって洗練され、豊かな香りを持つ至高の蒸留酒へと姿を変えました。
本日ご紹介するのは、1970年代流通の、およそ半世紀の時を経たオールドボトルのラムです。
16世紀の誕生から、数多の歴史を経て技術が磨き上げられた1970年代。
さらに、そこから瓶の中で50年という歳月を眠り続けたラム酒。
かつて誰かの現実を麻痺させるための「牙」だった激しさは、もはやどこにもありません。
半世紀というの中で、魔法のように角が取れ、驚くほどまろやかで優しい「天使の休息」のような味わいへと生まれ変わりました。
不思議なものです。
かつての過酷な時代背景の中から生まれた飲み物が、長い歳月を経て、今度は私たちの心を癒やし、寄り添ってくれる存在へと昇華したのです。
ガーナの城から始まった歴史の断片。
そして1970年代から、2026年の今日まで。

時をくぐり抜け、穏やかな円熟へと辿り着いたそのラム酒は、一口飲むごとに心を解きほぐし、新しい年を生きる勇気を与えてくれるはずです。
去年の「悪魔」を追い払い、今年の「平穏」を迎え入れる。
出逢いは必然。Rum & Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香
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Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!