ラオス・LAODI蒸溜所見学記④ 「お酒が運んでくれるのは、人との出会い」
2026.2.16
ラオス・LAODI蒸留所訪問記①|再会と美食の旅から始まる「奇跡の物語」
ラオス・LAODI蒸留所訪問記②|一週間で勝ち取った「奇跡の免許」
酒は人が集う場所
~グラス一杯のラムがつなぐ、立場を超えた縁~
私は、ずっと、知りたいことがありました。
日本で成功を収めた後、なぜあえて異国の地へ渡り、数々の困難の中でこれほどまでに心血を注いでラムを造り続けてこれたのか。
ラオディ創業者・井上さんは、最近ようやく見つけ出したという答えを、穏やかな口調で語ってくれました。

信州の夕焼けと、一杯のワイン
その答えは、ラム造りを始めるずっと前、長野県の ワイナリーでの体験にありました。
当時、井上さんはエッセイストが営むそのワイナリーの会員になりました。
広島から高額な会費を工面して参加した会員限定のパーティー。
そこで井上さんは、驚くような光景を目にします。
彼の隣に座っていたのは、有名な女優さんやアナウンサーといった、普段の生活では決して交わることのないような華やかな世界の人々でした。
最初は「広島弁と備後弁しか喋れん自分なんかが……」と気後れしていた井上さんでしたが、会が始まるとそんな不安は消え去りました。
皆で並んで美しい夕焼けを眺め、ワインを酌み交わし、料理を囲む。
そこには立場も、肩書きも、性別も関係のない、ただ純粋に楽しい時間が流れていました。

「酒を作るっていうのは、人が集うことなんだな」。
井上さんはその時、強烈にそう感じたと言います。
10年後に再びそのパーティーが開かれた際、顔ぶれは変わっていても、一口飲めばすぐにまた仲良くなれる。
そんな時間の尊さが、井上さんのラム造りの原動力となっていました。
「お酒っていうのは面白いもの。立場とか性別とか、いろんなことを全部すっ飛ばして、人が人と出会えるところ」。
この芯があったからこそ、創業期の大変な数々の試練に直面しても、井上さんがぶれることはありませんでした。
酒造りは、単なるビジネスではなく、「人と出会うための場」を創り出す行為だったのです。

世界中に広がる「ラム仲間」
今やLAODIは世界へ羽ばたき、井上さんはヨーロッパの展示会などで、カリブ海の島々からやってきたラムの造り手たちとも交流しています。
「アジアのあんなところで日本人が作っている」と最初は珍しがられても、同じ「ラムを造る人間」として、言葉の壁を超えてすぐに打ち解けてしまうのだそうです。
展示会が終わればお互いの酒を交換し合い、友情を深める。
そんな「世界中のラム仲間」との出会いもまた、井上さんにとっての宝物です。
旅の終わりに
今回の訪問では、初めて出会った仲間たちと共にサトウキビ畑に立ち、自らの手でサトウキビを刈り、その場で力強く圧搾される果汁の瑞々しい甘みに触れました。


泥にまみれて共に汗を流す中で見えてきたのは、単なる製造工程ではなく、
不屈の精神で原生林を切り拓いてきた井上さんの情熱、それを支える現地のパートナーとの強い絆。
そして、ここで誇りを持って働く人々の姿や、その志を慕って日本から海を越えてやってくる人たちの繋がり。
「出会いって、すごく大事。立場も、年齢も、何をやっているかも関係ない。
お酒というもので、美味しいよねと言い合いながら過ごせる時間は、人生にとって宝物ですから」。
井上さんのその言葉は、私の心に、とても暖かく、すっと入ってきました。

人生の宝物。
それは、何かを成し遂げた証や形あるものではなく、誰かと笑い合ったその「瞬間」の積み重ねなのだと気づかされました。
たった一度の人生。
こうした宝物にあといくつ出逢えるだろう。
そう思うと、ラム酒という存在が、私にとってもっともっと尊いものになりました
備忘録。
最終日のこと。
両替が足りなくて困っていた方がいたので、手持ちを換えてあげたら、今度は自分が資金難に陥ってしまいました(ラオスは現地通貨以外がほとんど使えない環境)。
けれど、手元にわずかなお金しかない状態で過ごす時間は、私にとって最高に楽しいひとときでした。
もしお金がたっぷり余っていたら、きっと適当にトゥクトゥクに乗って、適当に街を回って時間を潰していたでしょう。
そんな非現実的な状況だったからこそ見つけられた、明らかに現地の方しか行かなそうなお店での食事。


お店のお母さんは文字を読むことができなかったようで、翻訳アプリを見せたスマホを渡すたびに、奥から娘さんを呼んで注文を確認してくれました。
文字や言葉が通じなくても、一生懸命にこちらの意図を汲み取ろうとしてくれた、あの飾らないやり取り。
「最後にお酒が運んでくれるのは、人との出会い」。
井上さんが語っていたその哲学が、私自身の体験として鮮やかに繋がった瞬間でした。
あの食堂での時間は、LAODIという縁が私に運んでくれた、何にも代えがたい「人生の宝物」の一つです。
そして、この旅に一緒に行かないかと誘い、快くご一緒してくださったリトハピのお客様。
本当にありがとうございました。
あなたとの出会いもまた、私の人生の大切な宝物です。
…………………………….
LAODIのグラスを傾けるとき。
そこにはラオスの風とともに、井上さんが20年かけて守り抜いてきた「人が集い、笑い合う喜び」が、確かに宿っているはずです。
あなたの「人生の宝物」に……..🥃

「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
noteでまとめて見れます!
https://note.com/whisky_rum_mika/m/m343657f3df06
【谷本からの補足】 このラオディ蒸溜所に関する記事は、実際に現地を訪問した体験を基に執筆していますが、一部谷本の個人的な考察や解釈が含まれています。 一人のラムLOVERの独り言としてお楽しみいただければ幸いです。
【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto) 株式会社 Little.m 代表取締役 / オーナーバーテンダー
広島県広島市で20年続くRum&Whisky専門店「Bar Little Happiness(リトルハピネス)」店主。
2006年の創業以来、ウイスキーとラムの感動を伝える専門家として活動しています。
バックバーには1,000本を超える希少なレア銘柄から、地元広島の「桜尾」まで幅広く取り揃えています。
• 多店舗経営: 本店に加え、カジュアルに愉しめる姉妹店「Rum&WhiskyハイボールBar」を直営。
• オンライン事業: 全国へ厳選ボトルを小瓶で届けるオンラインショップ運営。
• 執筆・情報発信: 専門コラム【ウイスキーとラムの手帖】を執筆。
・創業ストーリー:22歳、ワーキングプアだった私が見つけた光。
「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!