ウイスキー聖地巡礼!秩父蒸溜所で体験した「伝統とロマン」のフロアモルティング
2026.2.13
ウイスキー聖地巡礼、他県のバーテンダーさんや蒸溜所を運営する造り手の方々と共に、秩父蒸溜所へ行ってきました!
現代のウイスキー界を牽引する「イチローズモルト」で、なんとフロアモルティングを体験させていただくという、ファン(というか推し活勢)としては一生モノの幸運に恵まれました。
感無量です!
案内してくださったスタッフさんは、「せっかくウイスキー好きの方たちが来てくださるので、体験をしてもらったら喜んでもらえるのでは!」と、フロアモルティングの現場に私たちを招き入れてくれました。
まじでありがとうございます!!


そもそもフロアモルティングって何?
フロアモルティングとは、一言で言うと「大麦を床に広げ、人の手でかき混ぜながら発芽させる」という伝統的な麦芽造りのことです。
ウイスキーの原料である麦芽を作るには、大麦を水に浸して発芽させる必要がありますが、現代では機械で効率よく管理するのが一般的。
でも、フロアモルティングは職人が朝夕に「切り返し」と呼ばれる撹拌作業をすべて手作業で行う、めちゃくちゃ手間と体力がかかる手法なんです。
そのため、現代のウイスキー業界ではほとんどの会社が廃止していて、世界的に見ても極めて希少な製法になっています。


なぜ、あえて「非効率」なフロアモルティングなのか
秩父第一蒸溜所で使われる麦芽のうち、自社でモルティングしているのは全体の約7〜8%だそうです。
手間も時間もかかるこの伝統製法を、守り続けるのには、スタッフの方が語ってくれた「3つの深い理由」がありました。
- 伝統への敬意とロマン:
「Back to the tradition(基本回帰)」という思想のもと、伝統的な製法を自らの手で再現することそのものに価値を見出している。
- 「ムラ」が育む、計算できない複雑味:
機械だと均一になってしまいますが、人の手で「切り返し」をすると、どうしてもわずかな「発芽のムラ」が生じます。
しかし、このバラつきこそが、最終的なウイスキーに機械では出せない「複雑な味わい」をもたらすと信じている。
- 歴史的品種と独自性:
山崎蒸溜所の創業期に主流だった「ゴールデンメロン」という麦の品種。
最新品種に比べればアルコールの収得効率は劣りますが、これをあえて復活させ、契約農家さんと共に栽培。
自社でモルティング技術を持っているからこそ、こうした「ブランド差別化の要」となる古い品種を、時代の流行に左右されずに使い続けられる。
な、なるほどーーーー!!!と唸る回答でした!






脈々と流れる「飲み手を大切にする精神」
イチローズモルトといえば、創業時、イチローさんが一軒一軒バーを回って、お店のマスターやバーテンダーにテイスティングしてもらいながらウイスキーを売ったという逸話があります。
見学の最中、作業中だった別のスタッフさんたちが入れ替わり立ち替わり挨拶に来てくれました。
そこには「バーテンダーや、その先にいる飲み手を大切にする」精神が流れているのを強く感じました。
スタッフ一人ひとりが、自分たちの造っているウイスキーが誰の手を渡り、どんなふうに楽しまれるのかを常に想像しているからこそできる、自然な、けれど特別な気遣い。
「情報の共有」というシステムの話ではなく、もっと深い、「自分たちの造るものへの誇りと、届ける相手への敬意」が現場全体に染み渡っていました。
こんなに規模は大きくなっても、そういう精神的なものが流れている空気に、とても感動しました。


案内してくれたスタッフさんも、踏み込んだ質問に対してマニュアルではない「自分の言葉」で真摯に応えてくれました。
たとえば、濾過の様子をみる「アンダーバック」の液面を指標にして、目詰まりしていないか判断するアナログな職人技の話や、スコットランド伝統の「2:7:1」という粉砕比率をどう実現するかといった高度な話……などなど….。。。…..
正直、私は製造工程をざっくりしか理解できていないので、専門的すぎる質疑応答はほぼ聞き取れませんでした笑。
紹介したい気持ちは山々なのですが……申し訳ない!!
でも、プロフェッショナルなメンバーとご一緒し、自分とは違う視点を持つ人たちと巡ることで、蒸溜所の景色が全く新しく、5倍の速度で解像度を上げていくのを感じています。
きっと、1年後にはもう少し深くウイスキーを理解し、皆様にお届けできる自分になっているはずです!
「守破離」の先に、自分たちらしさを見つける
創業者の肥土伊知郎さんが大切にしていることに「守破離」という言葉があるそうです。
実家の会社が経営破綻し、廃棄されようとしていた熟成原酒をすべて引き取って、ベンチャーウイスキー(イチローズモルトの会社名)を立ち上げたのが2004年のこと。
まずは伝統的な作り方を徹底的に「守」り、そこに学ぶことで、その先に「自分たちらしさ(離)」を見つけていこうとする職人の謙虚な美学が、この蒸溜所には満ちていました。

世界でもここだけと言われるミズナラの発酵槽を使い、乳酸発酵を活かして「クリーン&リッチ」な香味を目指すのも、そのこだわりの現れです。
私が初めてイチローズモルトを訪れたのは2008年か2009年頃でした。
まだ「カードシリーズ」が世界的な評価を受ける前で、ロビーではこのカードシリーズが飲み放題という、今では考えられないほど贅沢な時代でした。
あの54種類のセットが1億6,000万円で落札される未来なんて、誰も想像していなかった頃。
長旅の疲れであまり飲まなかった自分を叱ってやりたいですが(笑)、あの頃から変わらない「実直な造り」が、今の伝説を作ったのだと改めて痛感します。
ちなみに、最近の私のイチローズモルトの推しは新しくなったDD(ダブルディスティラリーズ)です!

前のDDが大好きだったので、新しいのを飲む機会がなかったのですが、先日東京のBARで飲んだら、驚くほどに美人すぎる綺麗なウイスキーでびっくり!
フルーティーで爽やか!たぶん、ハイボールも合います。(リトハピには明日入荷予定です)
秩父蒸溜所の皆様、ご一緒させていただいたプロフェッショナルな皆様。
最高の体験をご一緒させていただき、本当にありがとうございました。

「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto) 株式会社 Little.m 代表取締役 / オーナーバーテンダー
広島県広島市で20年続くRum&Whisky専門店「Bar Little Happiness(リトルハピネス)」店主。
2006年の創業以来、ウイスキーとラムの感動を伝える専門家として活動しています。
バックバーには1,000本を超える希少なレア銘柄から、地元広島の「桜尾」まで幅広く取り揃えています。
• 多店舗経営: 本店に加え、カジュアルに愉しめる姉妹店「Rum&WhiskyハイボールBar」を直営。
• オンライン事業: 全国へ厳選ボトルを小瓶で届けるオンラインショップ運営。
• 執筆・情報発信: 専門コラム【ウイスキーとラムの手帖】を執筆。
・創業ストーリー:22歳、ワーキングプアだった私が見つけた光。
「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!