ラオス・LAODI蒸溜所見学記③オバマ大統領が運んだ風
2026.2.14
国家の威信をかけた舞台と、世界への扉

蒸留所の穏やかな午後の光の中で、井上さんは2016年に起きた「奇跡のような出来事」を懐かしそうに語ってくれました。
それは、かつての組織が解散し、新生LAODIとして歩み始めた矢先の出来事でした。

歴史の転換点、ラオス初の米大統領訪問
2016年、ラオスの首都ビエンチャンでASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会談が開催されました。
この年はラオスにとって、そしてLAODIにとって歴史的な年となります。
なぜなら、アメリカのオバマ大統領が、現職の大統領として史上初めてラオスを公式訪問したからです。
ラオスという国は、かつてのベトナム戦争において、実はベトナム以上に激しい爆撃を受けた歴史を持っています。
今なお国内には多くの不発弾が残り、そのすべてを処理するにはあと200年はかかると言われるほど、戦争の爪痕は深いのです。
そんな歴史的背景を持つ国にアメリカの大統領がやってくる。
それは、国を挙げての、言葉では言い表せないほどの緊張感と期待に満ちた瞬間でした。

突然の電話と「正式なオファー」
会談のわずか数週間前、井上さんのもとに外務省から一本の電話が入ります。
「ブースを出してくれ」という突然の打診でした。
あまりに突然のオファーにと最初は面食らった井上さんですが、その後、外務大臣からも直接の連絡が入りました。
それは、ラオス政府がLAODIを「国を代表する産業」として正式に認めたという、誇らしい転換点でした。

(井上さんが「HISTORY」と表現された初期のラオディラム酒・甕貯蔵)
鉄壁の警備と、場違いな(?)日本人の叫び
会談の会場は、異様な空気に包まれていました。
アメリカから持ち込まれた最新の検知器が並び、IDカードによる厳重なチェックが行われます。
建物内に入ると、遠隔操作による爆発を防ぐため、携帯電話の電波は完全に遮断されるという徹底ぶりでした。
プレス関係者の出入りすら厳しく制限され、NHKですら立ち入れないほど静まり返った会場内には、身内や関係者しかいない、まさに「選ばれた人だけ」の空間が広がっていました。

そんな中、日本の安倍首相が登場したときのことです。
LAODIのブースにいたスタッフは、あまりの感動と野次馬根性から、感極まって大声でこう叫んでしまいました。
「総理!!」
まるでサッカースタジアムのような熱い声援に、周囲は騒然としました。
すぐに安倍首相に同行していた首相補佐官や大使館の関係者たちが血相を変えて駆け寄ってきました。
「なんで、ここに一般の日本人がいるんですか!? 」
彼らにとって、この場にいる日本人は、安倍首相が連れてきた政府関係者や外交官だけであるはずでした。
しかし、そこにいたのはラオス政府に正式に招かれた、LAODIチームだったのです。
後から大笑いしたそうですが、この一幕は、LAODIがいかに特別な立場(ラオスの代表)としてその場に立っていたかを象徴する出来事となりました。
「国を代表するお土産」としての喝采
この会談を境に、LAODIを取り巻く環境は劇的に変わりました。
各国の首脳や閣僚たちの目に留まったことで、「国を代表する酒」としての評価が一気に高まったのです。
その後、ラオス政府から正式なオーダーが入るようになり、海外の賓客への「公式なお土産」としてLAODIが選ばれるようになりました。


(空港では、お土産として、LAODI関連商品の棚が多くを占めていました。)
広島からパリへ、そして世界へ
この噂を聞きつけて、世界唯一のラム専門誌である『ラム・ポーター』が取材に訪れ、井上さんがサトウキビを抱える姿が誌面を飾りました。
それをきっかけに世界中からメールで注文が舞い込むようになったのです。
その後、フランスの代理店からも誘いを受け、パリやロンドンといったヨーロッパの主要な展示会にも進出を果たしました。
井上さんは、シハタ氏と二人三脚で、慣れない地下鉄を乗り継ぎ、エアビー(Airbnb)の狭い屋根裏部屋に泊まりながら、重いサンプルボトルを抱えてヨーロッパの街を奔走しました。
井上さんは真のパートナーとともに、ラオスの風を世界中へ届けています。
(最終回は「酒は人が集う場所 ― 井上さんがラムに託す夢」)


「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
【この記事を書いた人】
谷本 美香(Mika Tanimoto) 株式会社 Little.m 代表取締役 / オーナーバーテンダー
広島県広島市で20年続くRum&Whisky専門店「Bar Little Happiness(リトルハピネス)」店主。
2006年の創業以来、ウイスキーとラムの感動を伝える専門家として活動しています。
バックバーには1,000本を超える希少なレア銘柄から、地元広島の「桜尾」まで幅広く取り揃えています。
• 多店舗経営: 本店に加え、カジュアルに愉しめる姉妹店「Rum&WhiskyハイボールBar」を直営。
• オンライン事業: 全国へ厳選ボトルを小瓶で届けるオンラインショップ運営。
• 執筆・情報発信: 専門コラム【ウイスキーとラムの手帖】を執筆。
・創業ストーリー:22歳、ワーキングプアだった私が見つけた光。
「ウイスキーもラムも、作り手の想いに触れたとき、もっと美味しくなる」
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!