広島・呉の挑戦:失われた「古き良きマッカラン」の芳香を追う兄弟の物語
2025.12.13
📢 広島にある熱い挑戦をレポート!
今回、瀬戸内蒸溜所さんを伺わせていただきましたが、同じ広島なのにほとんど何も知らなかったことに驚きと感動がありました!
この熱い物語を、皆さまに全3話でお届けします!!
創業170年を迎える老舗が、なぜ今、ウイスキー造りを始めたのでしょうか?
その背景には、過去への憧れと、未来への緻密な設計がありました。
広島県呉市で、一般的な常識を覆す製法で理想の味を追求する、ある兄弟の物語をご紹介します。
170年目の「真逆の挑戦」
この蒸留所は、代々日本酒を造ってきました。
しかし、コロナ禍を経て、彼らは大きな転換を決意します。
日本酒は、造りたてが最も価値が高く、時間と共にその価値は下がっていきます。
一方、ウイスキーは真逆で、造り始めが最も価値が低く、熟成という時間と共にその価値が上がっていくものです。
この「真逆」の挑戦を始めたのは、「家業の幅を広げ、次の100年を見据える」という、長期的な戦略があったからです。

始まりの理由 — 兄が追い求めた「シェリー樽ウイスキー」の幻影」
幻の銘酒を追いかけて
かつて、この蒸留所の兄が出会った一杯のウイスキー。
それは、1960年代、1970年代のマッカランに象徴される、シェリー樽熟成が生み出す重厚で複雑な味わいでした。
グラスに注ぐだけで漂う、深いナッツやドライフルーツのような香り—時代とともに変わり、市場から遠ざかってしまった「失われた一杯」です。
その「過去の最高峰」への強烈な記憶が、家業の歴史を動かしました。
彼を突き動かしたのは、「もう手に入らないなら、自分たちの手でその香味を再現するしかない」という決意でした。
それは、単なるノスタルジーではなく、理想の味を現代に蘇らせるという、使命感にも似たものです。

なぜ「非効率」な製法を選ぶのか?
彼らが目指す「濃厚な味わい」を実現するため、製造工程ではあえて非効率な製法を採用しています。
その一つが、蒸留の最後にウイスキーの素を採取する工程、「ミドルカット」での工夫です。
ウイスキー造りでは、蒸留によって出てくる液体から、製品にふさわしい真ん中の良い部分だけを切り取ります。

- 一般的なウイスキー: 品質を担保するため、クリアな部分(アルコール度数約76%から61%)までを安全に採取します。
- 瀬戸内蒸留所: 敢然と、アルコール度数が40%になるまで、採取する範囲を大幅に「落として」広げます。
この40%付近の液体には、通常「雑味」として切り捨てられる重い成分が多く含まれています。
しかし、彼らはこれこそが「重厚で複雑な香味」のもとだと信じています。
リスクを冒してでもその成分を積極的に取り込み、熟成によって美味しく変化させる。
この「非効率」に見えるこだわりこそが、過去の理想の味を現代に蘇らせる、彼らのウイスキー哲学の始まりなのです。
次回【第2話】は、MRI研究者という異色の経歴を持つ弟の「樽9割シェリー」の設計図と、200年目の品質へのビジョンに迫ります!
お見逃しなく🔔✨


出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!