【「特級ラベル」とは──ラベルに刻まれた時代と、人々の想い】
2025.7.27
カウンターに置かれた、古いジョニーウォーカーのボトル。
そのラベルにある「特級」という二文字は、今のボトルにはもうありません。
けれど、この二文字には、ただの表示以上の意味が込められています。
「特級ラベル」とは何か
1953年から1989年まで、日本では酒税法に基づき、ウイスキーやブランデーに級別制度がありました。
特級・一級・二級。
特級はその最上位であり、原酒の混和率やアルコール度数など厳しい基準を満たす必要がありました。
当然、酒税も一番高く、値段も高価。
「特級」ラベルは、当時の消費者にとって憧れであり、ちょっと背伸びをしてでも手に入れたい一本だったのです。
時代背景──洋酒は「時代の象徴」だった

高度経済成長期、ウイスキーは単なる嗜好品ではなく、時代を映すステータスシンボルでした。
広告には「洋酒を飲む=ハイカラで進歩的な大人」というメッセージがあふれ、
バーやクラブのカウンターには、スーツ姿の大人たちがグラスを傾けていました。
赤いジョニーウォーカーに日本語で「特級」と書かれている光景。
それは「異国の酒が日本の文化に受け入れられていく」過渡期の象徴でもあります。
特級ラベルが今も魅力的な理由
現代のジョニーウォーカーとは異なり、当時のブレンドはより、スモークな余韻が重厚で、熟成年数の幅も広かったと言われています。
飲むと、どこか角が取れたようなまろやかさが舌に残り、
「これが昭和の高度成長期、大人たちが飲んでいた味か」と思わせる時間が広がります。
今ウイスキー愛好家が特級ラベルに惹かれるのは、
単なる味わいのためだけではありません。
歴史の証、当時の文化の象徴、そして希少なストーリーを感じられるからです。
(もちろん、オークション市場で高値がつくということも、一つの要因です。)
リトルハピネスで飲む「特級ジョニー」
リトルハピネスのカウンターには、そんな「特級ラベル」のジョニーウォーカーが眠っています。
味を確かめるだけでなく、昭和の空気ごとグラスに注がれた一杯を楽しむ時間。
それは、単なる試飲ではなく、物語を飲む体験です。
次に「特級」と書かれたボトルを見かけたら、
ぜひその時代に想いを馳せながら、ゆっくりとグラスを傾けてみてください。
きっと、その一杯があなたの中に小さな物語を残してくれるはずです。
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香