【岡山ウイスキー。──まだ語られていない、日本のシングルモルト】
2025.7.15
岡山、と聞いてウイスキーを思い浮かべる人は、まだ多くないかもしれません。
けれどこの地には、100年の歴史を持つ酒造会社が、
ジャパニーズシングルモルトの世界に確かな足跡を残し始めています。
その名は、宮下酒造。
日本酒や焼酎の造り手として長年親しまれてきた老舗が、
2015年、創業100周年の節目にドイツ製のポットスチルを導入し、本格的なウイスキー蒸留へと舵を切りました。
宮下酒造との出会い

2018年リトハピ蒸溜所ツアーで、宮下酒造を訪ねたことがあります。
ご縁あって、なんと社長ご本人が案内してくださり、
蒸留設備や仕込みのこと、岡山という土地の水と気候、
そしてこれからの展望について、熱のこもった説明を受けました。
中でも印象的だったのは、
「クラフトジンは、うちが最初に始めたんですよ」と、誇らしげに語られていたこと。
……とはいえ、その後いくつかの蒸留所でも似たような話を聞くようになり、
どこが“本当に最初”だったのかは、正直わかりません 笑
ちなみに、クラフトジンの世界では「京都蒸溜所のKi No Bi」が先駆者として語られることが多いようです。
それぞれの土地で、それぞれの解釈で「はじまり」があったのだと思います。
けれど、あの日あの場所で聞いた言葉と、
目の前に広がるポットスチルの美しさは、今も鮮やかに思い出せます。
「何が最初か」よりも、「どう始めたか」にこそ、その蒸留所らしさが出るのかもしれません。
🥃 ラベルに宿る、それぞれの物語
現在、リトハピでは3種類の岡山ウイスキーをご用意しています。
並べてみると、それぞれに異なる表情があって、見ているだけでも楽しいボトルたちです。
◾️ 岡山 トリプルカスク
岡山県産の大麦麦芽を使い、ブランデー樽・シェリー樽・ミズナラ樽の3種を3年以上熟成後にバッティングした数量限定のシングルモルト。
「World Whiskies Awards」でシングルモルトノーエイジ部門のカテゴリーウィナーを受賞するなど、国際的にも高い評価を獲得しています
◾️ 岡山 倉敷ウイスキーフォーラム 2024限定ボトル
倉敷ウイスキーフォーラム2024会場限定の特別ボトル。
岡山らしく、桃太郎をモチーフにした武将と犬たちが桜の下に佇むデザインが印象的です。
バーボン樽熟成、3年以上、315本限定という希少性もあり、柔らかい甘みと芯のある味わいが楽しめます。
◾️ 岡山 シングルモルトミズナラエクスプレッション 百世不磨
「「百世不磨」とは、百代を経ても磨滅しない──つまり、価値を保ったまま永く在り続けることを表す言葉。
バーボン樽熟成原酒をベースに、ミズナラ樽熟成原酒をブレンドした1本。
オークの甘さに、ミズナラ由来のメロンやココナッツ、白檀の香りが溶け合い、
それぞれの香味がしっかりと輪郭を持って広がっていきます。
*リトハピ鬼推しボトルです。
🍽 併設のレストランもまた魅力のひとつ
訪問時に立ち寄った宮下酒造併設のレストランでは、
地元の食材を活かした料理とともに、宮下酒造で作られる「独歩ビール」も愉しめます。
「また行きたいね」と言いながら帰ったあの帰り道、
お客様たち、リトハピスタッフの楽しそうな顔を、今でもよく覚えています。

岡山という名前を持つウイスキー
あるとき、岡山ウイスキーが一気に話題になったことがありました。
それは、大谷翔平選手が知人へのお土産として選んだ──というニュースがきっかけ。
各メディアにも大きく取り上げられ、
「大谷くんが選んだんだから、きっと本物なんだろう」
──そんなふうに思った人も多かったのではないでしょうか。
でも実際は、それよりもずっと前から、
このウイスキーは、岡山という土地の中で、丁寧に造られていました。
ラベルに描かれた「岡山」の文字。
それは、ただの地名ではなく、造り手たちの誇りのようなもの。
あなたの「岡山」は、どんな味がするでしょうか。
ぜひ、グラスの向こうで確かめてみてください。
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香