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ブラジャーフェンスの蒸溜所

2026.2.27
カードローナ蒸留所の入り口を彩る鮮やかなバラ園。かつて香水作りを目指した創業者の情熱を今に伝える、お花畑のような美しい風景

お花に囲まれた蒸留所とブラジャーフェンス

数年前、ニュージーランドのサウスアイランド、オタゴ地方に位置する「カードローナ蒸留所」を訪れました。

クイーンズタウンから車を走らせ、ニュージーランドで最も標高の高い公道の険しい峠を越えると、目の前にカードローナ・バレーの美しい景色が広がります。

かつて1850年代のゴールドラッシュに沸いたこの谷は、今では歴史の面影を色濃く残す、小さな町です。

その一角に佇むカードローナ蒸留所。

そこは、まるでお花畑の中に蒸留所が迷い込んだかのような場所でした。

今まで訪れた多くの蒸留所の中でも、これほどお花に溢れた場所は他にありません。

蒸留所の入り口を彩るバラの茂み。

私が訪問した時は、満開の時期ではありませんでしたが、それでも美しかった!

(↓カードローナに行った気分になれます。2倍速推奨)

デジレ・リード

これには、創業者デジレ・リードの物語が隠されています。

女性が創業したニュージーランド・カードローナ蒸溜所。

元弁護士であり、農家の娘でもある彼女が最初にこの場所で計画したのは、ウイスキー造りではなく「バラ油の香水」を作ることでした。

しかし、バラの精油を抽出するには、トンの花びらから抽出できるバラ油は、わずか1リットルしか取れないという、気の遠くなるような現実がありました。

そのあまりに過酷な歩留まりの低さに直面しながらも、彼女は「蒸留」という技術そのものへの探究心を捨てませんでした。

その蒸留技術への情熱をシングルモルト造りへと注ぎ込んだのです。

彼女の両親が先祖代々の農場を売却してまで娘の夢を支えたというエピソードには、この場所が持つ並々ならぬ覚悟を感じずにはいられません。

そんな温かなもてなしへの感謝を込めて、私は今回、日本から持参した広島の「桜尾(SAKURAO)」ウイスキーをプレゼントとして手渡しました。

広島もまた、美しい海と山に囲まれ、情熱を持ってウイスキーを産み出している土地です。

これは何?と、とても興味深く聞いてくれたのが、とても嬉しかったです。

ブラドローナ(Bradrona)

そして、この蒸留所を語る上で避けて通れないのが、道沿いに現れる異様な、しかし愛に満ちた光景「ブラ・フェンス(Bradrona)」です。

フェンスには、新しいものから風雨にさらされて色あせたものまで、数え切れないほどのブラジャーが風にたなびいています。

ここは「ニュージーランド乳がん基金(ACUF)」への寄付を募る、神聖なチャリティスポット。

スタッフの一人に話を聞くと、実は彼女たちの親しい友人が乳がんを患ったことが、この活動を支援する強い動機になっていると教えてくれました。

『ブラドローナ』と呼ばれるフェンス。乳がん基金へのチャリティとして、数え切れないほどの多彩なブラジャーが風にたなびく、愛とユーモアに満ちた光景。

最初は数枚から始まったこの活動は、今では世界中の旅人が車を止め、1回5ドル、10ドルといった寄付とともに、自分の大切な誰かを想ってブラジャーをかけていく「祈りの場」となりました。

「誰かの痛みを自分のこととして捉え、それをユーモアに変えて社会を良くしていく」。

バラの香りと、風に舞うブラジャー。

一見すると不思議な組み合わせですが、そこには共通して、デジレたちカードローナの人々が持つ「大切な人を守りたい、喜ばせたい」という深い慈愛が流れていました。

乳がん基金への寄付を行い、大切な友人への祈りを込めて『ブラドローナ』の前で広島バーリトルハピネス店主・谷本美香

この温かな想いに触れた後で味わうウイスキーは、一体どんな味がするのでしょうか。

次回はいよいよ、世界中のウイスキーファンを魅了する、こだわりの造りと「樽出し」の魔法についてお届けします。

【谷本からの補足】  このカードローナ蒸留所の記録は、現地での実体験をもとに綴っていますが、私の英語力は0のため、現地通訳を頼んで訪問しています。

現地通訳は、ウイスキーの知識は0であり、補足し合いながらの体験となりました。

帰国後、改めて自分なりに調べ直し、ウイスキーLOVERとしての考察と解釈を加えて構成しました。

出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。