カウンターのネッシーが繋ぐ、スコットランドとピートの物語
2025.12.23
「巳年(みどし)だからですか?」
カウンターの片隅に座る「この子」を見て、今年は本当にたくさんのお客様からお声がけをいただきました。

2025年も残すところあとわずか。
干支のバトンタッチを象徴しているようにも見えますが、実はこの子の故郷は、遥か遠くスコットランドの「ネス湖(Loch Ness)」なんです。
数年前、ウイスキーの聖地を巡る旅の途中で立ち寄った「ネス湖博物館」。
そこで一目惚れして連れて帰ってきた、私にとって大切な旅の記憶の断片です。
■ 科学とロマンが交差する場所
2018年の10月に訪れたその博物館は、想像していたよりもずっと「本気」でネッシーに向き合っている場所でした。
館内では、過去に行われた大規模なソナー探査の結果や、水質のデータ、目撃証言の検証などが淡々と、かつ緻密に展示されていました。
「ただの伝説」で片付けない、スコットランドの人々の情熱と、どこか真面目な検証の姿勢がとても印象に残っています。

そして何より圧倒されたのが、併設されたショップの光景。
棚を埋め尽くすように、ネッシーのぬいぐるみがそれこそ「山積み」になって売られていたんです。
サイズも表情もさまざまなネッシーたちに囲まれて、どの子を連れて帰ろうか……と悩んだのも、今では良い思い出です。
■ ピートが染まる「真っ黒な湖」
実際に目にするネス湖の水は、驚くほど「真っ黒」でした。
スコットランドの象徴であるピート(泥炭)の層を、周囲の山々から流れ込む雨水がたっぷりとくぐり抜けてくるため、湖水は濃い紅茶や、熟成の進んだウイスキーのような深い琥珀色をしています。
あまりにピートの成分が濃すぎて、水面から数メートル潜れば、そこはもう光の届かない視界ゼロの暗闇。
「この深いピートの底になら、本当に何かが潜んでいるのかもしれない……」
そんな風に人々の想像を掻き立てるネス湖のミステリアスな空気感は、どこか、何十年もの間、静寂の中で変化を待ち続けるウイスキーの熟成にも似ている気がします。

■ 旅の記憶をカウンターにのせて
たまたま2025年の干支である「蛇」の縁起物のような顔をして座っていますが、その正体はスコットランドの伝説の生き物。
リトハピのカウンターで、お客様と琥珀色の液体を見守ってくれる小さな守り神のような存在です。
この子に目をやるたび、私の脳裏には、あのピート色に染まった湖面と、スコットランドの冷涼な風が鮮やかに蘇ります。

2025年も、いよいよ数えるほどとなりました。
今夜も、遠い異国スコットランドの情景に思いを馳せながら。 皆さまと共に、静かな琥珀色の時間をご用意してお待ちしております。🌙
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香
Definitely very recommended, I hope to be able to come back here in a future Japan trip! Thank you so much, cheers from Italy!