広島被爆80年に寄せて|広島で生きるバー店主の想い
2025.8.06
—広島の片隅から、事実を知ることについて—
2025年8月6日、広島は被爆から80年を迎えました。
今年の平和記念式典で、子供代表「平和への誓い」はこう始まりました。
「平和への誓い。いつかはおとずれる被爆者のいない世界。同じ過ちを繰り返さないために、多くの人が事実を知る必要があります。」
——事実を知ること。
私は広島で生まれ、広島で育ち、今も広島で暮らしています。
きっとこれからも、ずっと広島です。
子どもの頃の夏といえば、折り鶴を折り、平和公園へ行き、語り部の方々の話を聞くことが恒例でした。
「はだしのゲン」を読み、被爆樹の下で平和について考える。
それは広島の小学校に通う者にとって、ある種の夏の風物詩でした。

多くの広島の人は「核なんて嫌だ、なくなればいい」と願っています。
一方で、戦争の恐ろしさを知っているからこそ「抵抗のために核を持った方がいい」という声もあります。
大人になると、核を持つことにも一理あると分かる。
それでも、私は核なんてなくなればいいと思っていますし、いまだに物理的な戦争が起きるなんて思ってもみませんでした。
もし起こるなら、ITやウイルスによるものだと思っていました。
人は、物理的な支配でしか争えないのでしょうか。
みんなが手を取り合って平和を実現することはできないのでしょうか。
そんなことを言っていたら、資本主義では負けてしまうのでしょうか。
美しい世界は、実現不可能なのでしょうか。
美しい世界と資本主義というのは、ある種相反するところにあって、上手にそれをマネジメントできた人だけが勝ち上がっていく。
でもそれとは同時に、誰かの犠牲のもとに成り立っている。
美しい世界を追求する人より、実利を取る人のほうが、結果的に誰かを幸せにしていることもある。
そんなジレンマや複雑なことが絡み合っている。
結局、すべてがポジショントークでしかないのだと思います。
だからこそ、しっかり事実を知って、自分のポジションを持つことが重要なのだと、私は思います。
私はウイスキーバーを営んでいて、海外からのお客様をご案内することもあります。
広島を訪れても「資料館には行きたくない」とおっしゃる方が少なくありません。
——「なぜ、あなたたちの立場からの世界を見せられなければならないのか?」
そんな想いを抱えている方もいます。
それでも、ぜひ一緒に行ってほしいとお伝えし、足を運んでもらうと、皆さん口をそろえて「来てよかった」と言ってくださいます。
事前のイメージと違って、心を打たれる体験がそこにはあるのです。




世界平和なんて、大きなことを私が語る資格はないかもしれません。
私が語ったところで、何か大きな影響があるわけでもないでしょう。
でも、広島で生まれ育った者として、自分の言葉で平和を語ることには意味がある。
一杯のグラスを前に、そんな話を少しだけしてみたい。
広島の片隅から、そう願っています。

※広島を訪れた方へ。
原爆ドームを見て終わりにする方も多いのですが、ぜひ平和記念資料館にも足を運んでみてください。
そこには、写真や文章だけでは伝わらない「事実」があります。
※ウイスキー、ラム酒関係者の方へ。
広島にお越しの際は、手配やアテンドをいたします。どうぞお気軽にお声がけください(無料)。
出逢いは必然。Rum&Whiskyの世界へようこそ。
Bar Little Happiness 谷本美香