2017年2月20日の「朝日新聞」に掲載されました。
2017.2.20「アイラ島のスコッチはノンピートでもピートの香りが漂うんです。流れてる水が既にピートを含んだ地層を通っているから」。通でも思わずうなる蘊蓄を語るかと思えば、それほど詳しくない人には気さくに「どんな味が好きですか」。
ここは広島・流川のウイスキー専門のバー「リトル・ハピネス」。棚に並ぶ400本以上のボトルを前に、言葉と味で客を楽しませる。
11年前、繁華街で駐車場を所有していた知人に「空きスペースで何かしてみる?」と誘われ、そこの待合所でコーヒーや酒の提供を始めた。一人の客が店で扱ってみれば、と誘ってくれたのが1本のウイスキーだった。
「当時はお酒も飲めなかったんです。味も当然分からなかった」。だが客の喜ぶ顔を見て、「棚いっぱいにウイスキーが並んだ店を作ろう」と決意。今の場所に移転し独立したのが10年前だ。試飲を繰り返して味を研究し、国内の蒸留所のほとんどを巡った。
田舎の古い酒屋を訪ね、掘り出しものも発掘する。遠くはスコットランドまで足を運んだ。「定番」を除き、同じ銘柄は仕入れないのがこだわりだ。
ウイスキー談議にふける常連客、仕事の悩みを語り合うサラリーマン、思い出話に興じるカップル……。好みの一杯を片手に、それぞれが話に花を咲かせるのを見るのが喜びだという。
「ゆっくりした一時を過ごし、『小さな幸せ』を感じられるお店であり続けたい」
紹介記事名
朝日新聞
掲載日
2017年2月20日
ライター
加治隼人